「行政書士法の改正に反対する会長声明」(2013年8月29日)


自由民主党総務部会と行政書士制度推進議員連盟(野田毅会長)は2013年(平成25年)6月5日、行政書士が作成することのできる官公署に提出する書類に係る許認可等に関する審査請求、異議申立て、再審査請求等行政庁に対する不服申立て(以下「行政不服申立て等」という。)について行政書士が代理人となることができる「行政書士法改正法案」を承認した。
  しかし、当会は、行政書士が行政不服申立て等の代理人になることについて、下記の理由から強く反対するものである。
  第1に、行政書士に行政不服申立て等の代理人にしなければならない必要性がなく立法事実に欠く。すなわち行政不服申立て等の代理人が不足しているという事実はない。2013年(平成25年)7月1日現在、弁護士数は3万3628人であり、さらに今後も増加している現状からすれば、行政不服申立て等の代理人は十分供給されているといってよい。
  第2に、行政不服申立て等の代理行為は、行政訴訟の提起も十二分に視野に入れて行うべきものであるが、行政書士は行政訴訟の代理人たる資格を有さず、訴訟提起について検討できる資質を欠いている。行政不服申立て等の代理人となるには、より高度な専門性と慎重かつ適切な判断が不可欠であり、法科大学院・司法試験・司法修習を通して能力が十分担保されている行政訴訟の専門家である弁護士しかない。
  第3に、行政不服申立て等は、国民と行政庁とが鋭く対立するものであるが、当事者の利害対立を前提に資格が構築されていない行政書士が代理行為を行うことにより、国民の権利利益が侵害されることが強く懸念される。
  第4に、行政不服申立制度は、行政庁の違法又は不当な行政処分を是正し、国民の権利利益を擁護するための制度である。行政手続の円滑な実施に寄与することを主目的とする行政書士が、行政庁の行った処分に対しその是正を求めるということは、行政庁から真正面から対立する場面であり、監督官庁を行政庁とする行政書士が担当すべきではない。
  すなわち、行政庁の行為に対する行政不服申立て等の代理行為は、行政庁たる総務省を監督官庁とする行政書士が行うべきではなく、弁護士自治制度の下、行政庁から独立している弁護士のみが適切に行いうる。
  第5に、弁護士は、行政手続きにおいて代理人として活躍しており、行政書士を不服申立の代理人とする必要性は乏しい。具体的には、出入国管理及び難民認定法、生活保護法、精神保健及び精神障害者福祉法等に基づく行政手続等について、行政による不当な処分から社会的弱者を救済する実績を上げている。しかも当該分野を弁護士のみで十分担える人的基盤があることから、あえて行政書士に当該代理権を付与する必要性に欠ける。
  以上のとおり、当会は、行政書士に対する行政不服申立代理権の付与に強く反対する。


2013年(平成25年)8月29日

京  都  弁  護  士  会

会 長  藤  井  正  大


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