「特定秘密の保護に関する法律案の概要」に対する会長声明(2013年9月26日)


  本年9月3日、政府より「特定秘密の保護に関する法律案の概要」(以下「法律案概要」という。)が発表された。
  「法律案概要」によれば、我が国の安全保障に関する一定の事項のうち特に秘匿を要するものについて、行政機関において特定秘密と指定し、特定秘密を取り扱う者について「適正評価」としてプライバシーに関する情報を取得して「人的管理」を行い、さらに、特定秘密の漏えい行為や一定の特定秘密取得行為、それらの共謀、教唆、煽動に対して、懲役刑を含む罰則をもって処罰するとされている。

  当会は、昨年6月21日、「秘密保全法制定に反対する会長声明」を発表し、「秘密保全のための法制の在り方に関する有識者会議」が提出した報告書に基づく秘密保全法制定について、以下の問題点を指摘した。
(1)「特別秘密」の範囲が曖昧かつ広範で、解釈・運用によっては原発事故に関する情報など本来広く社会に公表されるべき情報までが隠匿され、知る権利が害されるおそれがある。
(2)「人的管理」の対象となる者及びその周辺の人々のプライバシーが侵害されるおそれがある。
(3)処罰範囲が不明確かつ広範であって罪刑法定主義に反するとともに、「特定取得行為」として取材活動が広く規制され、報道機関等の取材・報道の自由が侵害され、言論の自由に対する萎縮効果が大きい。
  (4)罰則を強化すべき必要性・相当性に疑問がある。

  「法律案概要」では、「特定秘密」の指定範囲について、①防衛に関する事項、②外交に関する事項、③外国の利益を図る目的で行われる安全脅威活動の防止に関する事項、④テロ活動防止に関する事項を具体的に限定列挙したとされている。
  しかしながら、「特定秘密」の指定範囲について限定列挙したとされる規定を見ても、やはり曖昧かつ広範である。また、具体的にどのような情報を「特定秘密」と指定するかについては行政機関の長に委ねられている一方で、「特定秘密」の指定の妥当性について事後的に検証する仕組みはなく、秘密の範囲が無限定に拡大され、市民の生活や権利に重大な影響を及ぼす情報が隠匿されるおそれは否定できない。
  また、拡張解釈により国民の基本的人権を不当に侵害してはならない旨規定するとされているものの、上記会長声明で指摘した問題点はいずれも残されたままとなっている。

  以上のとおり、今般、政府より発表された「法律案概要」は、知る権利をはじめとする市民の権利を侵害するおそれのあるものであり、同法律案が国会に提出されないよう強く求めるものである。

2013年(平成25年)9月26日

京  都  弁  護  士  会

会長  藤  井  正  大


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