「死刑執行に対する会長声明」(2013年9月26日)


1  2013年(平成25年)9月12日、東京拘置所において、1名に対する死刑の執行が行われた。死刑制度に対する様々な意見がある中において、同年4月26日に2名に対する執行が行われてから、5ヶ月足らずの間に、繰り返し死刑の執行が行われたことは、極めて遺憾である。

2  日本国の刑事裁判においては、死刑を言い渡すべき基準が不明確であり、同一の事件を扱っていながら、裁判所ごとに判断が分かれるという例も少なからず見受けられる。また死刑が確定した事件について、実際に執行する順序を定める明確な基準もなく、いかなる理由でその死刑が執行されたのかも、あえて明らかにはされていない。本件は、第一審では死刑ではなく無期懲役刑が言い渡されており、裁判所でもその判断が分かれていた案件であって、また理由が明らかにされないまま、死刑確定日から2年半余りで、より以前に死刑確定者となった者よりも先んじてその執行が行われたものである。死刑制度は、いやしくも、国が権力を用いて人命を奪うものである以上、明確な基準もないままに運用されることは、本来的にあってはならない。それにもかかわらず、日本国の死刑制度は、明確な基準のないままで運用され続けている。

3  世界では、58カ国において死刑制度が運用されている。このうち、2012年(平成24年)に実際に死刑を執行した国は、日本国を含めて21カ国である。他方、あらゆる犯罪に対して死刑を廃止している国も97カ国あり、これに通常の犯罪に対してのみ死刑を廃止している国8カ国と10年以上死刑を執行していない事実上の廃止国35カ国を加えれば、世界198カ国のうち、3分の2以上にあたる140カ国が事実上の死刑廃止国となっているといえる。死刑制度に対する国際社会の考え方は、縮小から廃止へ向かおうとする情勢にあり、本年5月31日に発表された国連拷問禁止委員会の総括所見においては、日本国に対し、死刑制度を廃止する可能性についても考慮するよう勧告がなされている。しかし日本政府は、死刑制度の廃止はもとより、制度の抱える問題点についても一切検討を加えることなく、今回の死刑執行に及んだものであり、国際社会から求められている責務を果たしているとは到底いえない。

4  当会は、2006年(平成18年)6月8日「死刑執行の停止について(要請)」を発表して以後、なおも繰り返して行われ続けてきた死刑執行に対し、その都度、これに抗議する会長声明を発してきた。今般、日本国政府が、なおも死刑制度に対する検討を何ら深めないまま死刑の執行を行ったことに対してもまた、当会は、強く抗議するものである。

2013年(平成25年)9月26日

京  都  弁  護  士  会

会長  藤  井  正  大

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