「婚外子の法定相続分についての最高裁判所違憲決定を受けて民法(家族法)における差別的規定の改正を求める会長声明」(2013年10月17日)
1 本年9月4日、最高裁判所大法廷は、婚外子の相続分を婚内子の2分の1とする規定(民法第900条第4項ただし書前段、以下「本規定」という。)を憲法第14条第1項に違反して無効であると判示する決定を行った。
同決定は、「本件規定の合理性については、個人の尊厳と法の下の平等を定める憲法に照らし、嫡出でない子の権利が不当に侵害されているか否かという観点から判断されるべき法的問題であり」、「婚姻、家族の在り方に対する国民の意識も変化し、家族という共同体の中における個人の尊重がより明確に認識されてきたことは明らかであ」り、「父母が婚姻関係になかったという、子にとっては自ら選択ないし修正する余地のない事柄を理由としてその子に不利益を及ぼすことは許されず、子を個人として尊重し、その権利を保障すべきであるという考え方が確立されてきているものということができ」、「立法府の裁量権を考慮しても、嫡出子と嫡出でない子の法定相続分を区別する合理的根拠は失われている」とし、本規定を無効と判示し、本規定を合憲とした最高裁判所大法廷1995年(平成7年)7月5日決定を変更したのである。
2 当会は、2010年(平成22年)3月25日、「民法の『非嫡出子』相続差別の速やかな撤廃を求める会長声明」を発表し、本規定の廃止を求めてきた。また、国連自由権規約委員会、同女性差別撤廃委員会、同子どもの権利委員会及び同社会権規約委員会は、本規定の是正を繰り返し日本政府に求めており、併せて「嫡出でない子」との差別的な用語を改めるべきことも求めている。
国は、上記最高裁決定を受けて、速やかに本規定を削除し、婚外子と婚内子の相続分の平等化を実現すべきである。また、その際には「嫡出でない子」との差別的な用語も改めるべきである。
3 加えて、前記国連自由権規約委員会及び同女性差別撤廃委員会は、本規定の是正のみならず、選択的夫婦別姓を認めていないこと、女性のみに6か月の再婚禁止期間を定めていることなど、民法(家族法)の他の規定についても、差別的であるとして繰り返し懸念を表明し、早急な対策を講じるよう要請してきた。そして、本年9月3日には、同女性差別撤廃委員会から日本政府に対し、選択的夫婦別姓を認めること、嫡出である子と嫡出でない子の相続分を同等化することなどを内容とする民法改正法案を採択すること、女性のみに課せられている6か月間の再婚禁止期間を廃止することが改めて勧告された。
この点についても、当会は、2010年(平成22年)2月16日、「民法(家族法)改正の早期実現を求める会長声明」を発表し、民法(家族法)の上記各規定の改正を求めてきた。しかしながら、これらの民法(家族法)の規定についても、いまだに改正がなされていない。
4 当会は、国に対し、本規定を速やかに改正するよう求めるとともに、夫婦同姓しか認めない民法第750条及び女性にのみ再婚禁止期間を定める同法第733条などの民法(家族法)における差別的規定を、速やかに改正することを強く求めるものである。
2013年(平成25年)10月17日