「消費者の財産的被害の集団的な回復のための民事の裁判手続の特例に関する法律の成立に関する会長声明」(2013年12月5日)


  2013年(平成25年)12月4日、第185回臨時国会において、集団的消費者被害回復のための新たな訴訟制度の導入を内容とする「消費者の財産的被害の集団的な回復のための民事の裁判手続の特例に関する法律案」が可決され成立した。

  当会は、かねてより集団的消費者被害回復のための新たな訴訟制度(以下「新制度」という。)の早期実現を求めてきた。2011年(平成23年)12月には「実効性ある集団的消費者被害救済制度の創設を求める会長声明」を発表し、本法案が閣議決定され第183回通常国会に提出された本年4月には、速やかな審議入りと新制度導入の実現を求める会長声明を発表した。また、本法案の成立後に備えて、本年10月にはギリシャ共和国及びフランス共和国における新制度と同種の集団的訴訟制度の運用に関する海外調査を実施するなど、新制度の適切な実務運用の確立に向けた検討と準備を開始している。
本法律が成立したことは、我が国の消費者問題に関する歴史において画期的なこととして評価でき、本法律による新制度は、その対象が消費者契約に関わる一部の類型に限定されるものとはいえ、これまで十分に救済されてこなかった消費者被害の実効的救済に資することが期待されるものであり、施行後は積極的に活用されることが望まれる。

  一方、本法律には、新制度のより効果的な活用の観点から、本法律の施行までの間に更に議論や検討をすべき点もある。当会は、新制度により消費者の被害がより実効的に救済されるものとなるよう、以下のとおり、政府において引き続き取組みがなされるよう求めるものである。
1  本法律では、法律施行前に締結された消費者契約に関する請求権等については対象としないものとする適用制限規定が設けられている。施行日の前後により請求権の時的範囲を制約することは対象となる消費者にとって不合理な区別であり、適用制限規定が設けられたことは極めて遺憾である。適用対象から除外された消費者に対しても十分な保護が図られるよう、政府は国民生活センターの裁判外紛争解決手続(ADR)等の充実化を図るとともに、消費者に対する情報提供を行政の費用と責任において積極的に行うことを求めるものである。
2  本法律では、簡易確定手続における対象消費者への通知又は公告に要する費用の負担や仮差押え手続における担保金の負担といった費用面をはじめ、手続を主体的に追行することとなる特定適格消費者団体の負担が非常に重いものとなっている。新制度の実効性を高め、十分な消費者被害救済を図るためには、財政的な支援制度あるいは情報面を含めた間接的に特定適格消費者団体の負担を軽減しうるような措置が必要である。政府が実効性のある措置を行うよう求めるものである。
3  新制度における詳細な手続等については、政令等や最高裁判所規則にゆだねられている部分も多い。これらの規定内容は新制度の実効性にも大きく関わる部分であるから、政府や最高裁判所においてこれらの政令等を定めるにあたっては、制度の担い手となりうる適格消費者団体や手続に参加することとなる消費者の意見を十分に踏まえたものとすべきである。

  当会は、上記のような課題を踏まえ、新制度が消費者被害の実効的救済に真に資するものとなるよう、今後さらなる検討をして具体的な提言を行っていくなど支援を惜しまないことをここに表明する。

  2013年(平成25年)12月5日

京  都  弁  護  士  会

会長  藤  井  正  大


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