「商品先物取引の不招請勧誘禁止規制撤廃に反対する会長声明」(2013年12月6日)


  総合取引所構想実現のため、金融商品取引法の定める金融商品に商品先物取引を加えた改正法が2012年(平成24年)9月に成立した。そして、本年6月19日、内閣府副大臣が、衆議院経済産業委員会において、証券・金融・商品を一括的に取り扱う総合取引所での円滑な運営のための法整備に関する議論の中で、委員の質問に対し「商品先物取引についても、金融と同様に、不招請勧誘の禁止を解除する方向で推進していきたい」旨の答弁を行った。これは、総合取引所において商品先物取引業者に対しても監督権限を有することとなった金融庁が、総合取引所に関する法規制について、不招請勧誘禁止規制を撤廃する方向での検討を進めていることを示すものである。
  改正金融商品取引法の施行が2014年(平成26年)3月と迫っている中、金融庁は、現在、施行令等の改正作業に取り組み中であるが、現行の施行令(金融商品取引法施行令第16条の4第1項)では、店頭デリバティブ取引のみが不招請勧誘禁止規制の対象に指定され、市場デリバティブ取引は対象外であることから、今回国内の商品先物取引を不招請勧誘禁止規制の対象取引に加えなければ、現行の商品先物取引法下で禁止している不招請勧誘禁止規制が撤廃されることになってしまう。しかし、当会は、商品先物取引についての不招請勧誘禁止規制を撤廃することに、強く反対する。
  そもそも、商品先物取引についての不招請勧誘禁止規制は、商品先物取引業者が、不意打ち的な勧誘や執拗な勧誘により、顧客の本来の意図に反した取引に引き込み、多くの被害を生んできたという歴史的事実を踏まえ、消費者・被害者関係団体等の長年にわたる強い要望が積み重ねられた結果、ようやく、2009年(平成21年)の商品取引所法改正により、実現したものである。当会も、商品先物取引を含む投資取引被害の分野において、不招請勧誘を禁止すべきとして、2006年(平成18年)1月26日に「― 投資サービス法(仮称)に向けて ―  金融審議会金融分科会第一部会報告に対する意見書」を、同年4月20日に「証券取引法の一部を改正する法律案等(金融商品取引法案)に対する意見書」を、2007年(平成19年)5月21日に「証券取引法等の一部を改正する法律・金融商品取引業等に関する内閣府令案(仮称)に対する意見書」を取りまとめ、それぞれ発表してきた。
  産業構造審議会商品先物取引分科会における議論においても、「不招請勧誘の禁止の規定は施行後1年半しか経っておらず、これまでの相談・被害件数の減少と不招請勧誘の禁止措置との関係を十分に見極めることは難しいため、引き続き相談・被害の実情を見守りつつできる限りの効果分析を試みていくべきである」「将来において、不招請勧誘の禁止対象の見直しを検討する前提として、実態として消費者・委託者保護の徹底が定着したと見られ、不招請勧誘の禁止以外の規制措置により再び被害が拡大する可能性が少ないと考えられるなどの状況を見極めることが適当である」とし、商品先物取引についての不招請勧誘禁止規制を維持することが確認されていたところである(2012年(平成24年)8月21日付上記分科会報告書)。然るに、それから間もない現時点において、何らの検証もなく、規制を撤廃する方向で検討することは極めて不適切である。
  商品先物取引についての不招請勧誘禁止規制の導入以降、商品先物取引に関する苦情件数が減少する一方で、不招請勧誘禁止規制を潜脱する業者の勧誘により消費者が被害を受ける事例が、なお相当数報告されている。政府は、商品先物取引の出来高が大幅に減少していることを懸念し、その市場活性化対策として、再び、商品先物取引の不招請勧誘禁止規制を撤廃しようとしているが、不招請勧誘禁止規制を撤廃すれば、知識経験が十分ではない個人投資家が取引に巻き込まれ、再び商品先物取引被害が増加するおそれが非常に高い。
  よって、当会は、消費者保護の観点から、総合取引所において取り扱う商品先物取引について不招請勧誘禁止規制を撤廃することに強く反対するとともに、改正金融商品取引法施行令には商品先物取引に関する市場デリバティブを加えるよう強く求める。

    2013年(平成25年)11月25日

京  都  弁  護  士  会

会長  藤  井  正  大



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