「特定秘密保護法の拙速な採決に抗議する会長声明」(2013年12月6日)


  本日、特定秘密の保護に関する法律が可決され成立した。
  同法に対して、当会はこれまで、2012年(平成24年)6月21日付「秘密保全法制定に反対する会長声明」、2013年(平成25年)9月26日付「『特定秘密の保護に関する法律案の概要』に対する会長声明」、同年11月28日付「特定秘密保護法案の衆議院での採決に抗議し、廃案を求める会長声明」をそれぞれ発表し、同法の持つ危険性を指摘し、反対の意思を表明してきた。
  同法は、特定秘密の範囲が曖昧かつ広範であるため、解釈・運用によっては知る権利を侵害するおそれがあること、取材活動が広く制限され、報道機関等の取材・報道の自由を侵害し、言論の自由に対する萎縮効果をもたらすものであること、適性評価制度の導入により、対象となる者及びその周辺の者らのセンシティブ情報を行政機関が収集することとなり、プライバシーを侵害するおそれが極めて高いことなど、市民の基本的人権を侵害するおそれが極めて高い法律である。
  審議の過程において、同法に一部修正が加えられたが、かかる修正によっても同法の有する問題点は何ら払拭されていない。上記修正では秘密の指定期間が最長60年とされたが、その期間があまりに長すぎるのみならず、7項目にわたって広範な例外がもうけられている。第三者機関の設置についても、あくまで付則において検討するとされたに過ぎない。そして、プライバシー侵害のおそれが極めて高い適性評価制度については何ら見直されていないばかりか、見直しに向けた議論すらなされていない。

  同法の危険性については、国会での審議過程で行われた公聴会においても同様の指摘がなされ、同年11月25日に行われた福島県での地方公聴会、同年12月3日に行われた参考人質疑及び同月4日に行われた埼玉県での地方公聴会においては、出席者の多数が同法に対する懸念を示し、反対ないしは慎重審議を求める意見を表明した。
政府はそれらの懸念を払拭するためにも、より慎重な審議を行わなければならなかった。しかしながら、衆議院においても参議院においても、地方公聴会や参考人質疑において示された懸念や反対ないしは慎重審議を求める意見は何ら顧みられることなく、それぞれの地方公聴会の翌日には委員会採決が行われた。衆議院においては、上記修正について実質的な審議がほとんどなされないまま採決が行われ、参議院に至っては、送付からわずか10日で採決が行われるなど十分な審議が行われたとはおよそ言い難く、まさに両院を通じて拙速な審理であったと言わざるを得ない。同法の持つ危険性と同法がもたらしかねない重大な影響に鑑みると、かような拙速な審理による採決は到底是認できない。
  当会は、特定秘密保護法の拙速な採決について強く抗議するものである。

2013年(平成25年)12月6日

京  都  弁  護  士  会

会長  藤  井  正  大


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