法曹一元に関する司法制度改革審議会の審議に関する声明(2000年8月22日)




司法制度改革審議会は、8月6日から8日にかけて集中審議を行い、懸案の法曹一元問題もテーマとして取り上げられた。
言うまでもなく、司法改革の最大の課題は、司法官僚制度に、どのようにメスを入れるかにあり、とりわけ法曹一元制度の導入は、その改革のために不可欠の事柄として審議会の論議の行方が注目されてきた。
今回の審議において、審議会は、「21世紀日本社会の司法を担う高い質の裁判官の確保」と「裁判官の独立性の確保」のための各種さまざまな方策を構築していく必要性があるものとした上で、裁判官の給源、任用方法、人事制度のあり方について具体的な検討を加えていくとの方向性を示した。現行の裁判官採用システム・人事システムに種々の問題があり、そのための改革の必要性が指摘されたことは、この間の国民世論を背景にしたものであり、極めて重要な方向を示しているものとして、率直に評価できる。このような現行制度の問題点について、これを徹底的に解明し、制度の抜本的改革をはかろうとすれば、論議の方向は、自ずと法曹一元制度に行き着くはずであり、そのような方向に今後の審議が進展することを心から願うものである。
しかしながら、今回の審議においては、法曹一元制度の要である判事補制度の廃止について明確にされず、また法曹一元制度導入の具体的方策についても明確に示されなかったことは遺憾という他はない。
当会は、この間、何度かにわたり総会決議も含めて、司法官僚制度の問題点を解明する徹底的な審議を行うよう審議会に求めてきた。しかしながら最高裁をはじめとする「官」側からの改革を押しとどめようとする動きは極めて強く、結局、審議会では、検討が十分行われず、「官」に押された形で、このようになってきたものと思われる。しかし、それでは、折角の「市民の立場から」目指したはずの改革は、大きく後退を余儀なくされ、結局「官主導」の「改革」にとどまる恐れを払拭できない。
この間行われた各地での公聴会においても、現行裁判官制度の抜本的改革と法曹一元制度の導入を求める意見が圧倒していたように、審議会は、こうした国民の声をしっかりと受けとめ、「市民の目線」で抜本的な改革を目指すべきである。
すでに指摘したように、今回提案されている制度の構築を真に行うとすれば、法曹一元制度の導入をおいて他には無く、今後の審議においては、キャリアシステム・司法官僚制の問題点を徹底的に明らかにし、正面から法曹一元制度の導入に向けての論議を行うことを強く求めるものである。
このあと、審議会では、もう一つの大きな柱である司法の市民参加の問題を取り扱うが、従前より懸念されているように「一部の参審導入」で、その問題を「処理する」のではなく、陪審導入を含めた市民参加を真に実りあるものにするための豊かで抜本的な改革の方向を提案すべきことを心より要請するものである。
もとより、審議会は、ようやく折り返し地点を過ぎたばかりであり、中間報告も、これからである。私たちは、さらに司法官僚制の問題を市民の中に広げ、今回の司法改革のなかで、法曹一元制度と陪審制度の導入など、必要な改革が押し進められるよう、一層奮闘していく決意である。

2000年(平成12年)8月22日

京都弁護士会

会長    三  浦  正  毅


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