「行政書士法改正に反対する会長声明」(2014年3月27日)


  日本行政書士会連合会は、行政書士法を改正して、「行政書士が作成することのできる官公署に提出する書類に係る許認可等に関する審査請求、異議申立て、再審査請求等行政庁に対する不服申立てについて代理すること」を行政書士の業務範囲とすることを求め、そのための運動を推進してきており、それを受けた行政書士法改正法案が、近く議員立法として国会に提出される可能性が生じている。
  しかし、すでに日本弁護士連合会が2012年(平成24年)8月10日に会長声明で反対の立場を表明したのを始め、複数の単位弁護士会や弁護士会連合会も、相次いで反対の立場を表明する声明を発表しているように、行政書士に対し、行政不服申立の代理権を付与することには国民の権利利益に関わる問題がある。当会もすでに、2013年(平成25年)8月29日、種々の問題点を指摘して、行政書士に対する行政不服申立代理権の付与に、強く反対する旨の会長声明を発しているところであるが、ことがらの重大性と現状に鑑み、改めて本声明を発するものである。
  そもそも行政書士は、都道府県知事による監督を受けて、行政手続の円滑な実施に寄与することを主目的とした、行政庁に対する各種許認可関係の書類作成・提出を主たる業務としている。行政不服申立は、行政庁の違法・不当な行政処分を是正し国民の権利利益を擁護するための制度であるが、行政庁より監督を受け、行政手続の円滑な実施に寄与することを業務の主目的としている行政書士には、その業務ないし職務の性質上、行政庁と厳しく対峙し国民の側に立って、その権利利益擁護のために最善を尽くすことができないおそれがある。それにもかかわらず、行政書士に行政不服申立代理権を付与することは、結果的に国民の権利利益が全うされないという事態を招きかねない。この点については、仮に行政書士の職業倫理に期待するとしても、行政書士について定められている倫理綱領は、その内容において、当事者の利害や利益が鋭く対立する紛争事件の取扱いを前提にする弁護士職務基本規程と異なっており、行政書士において紛争事件を取り扱うだけの職業倫理が確立しているとはいえない。
  また、行政不服申立ての代理人を務めるに当たっては、行政訴訟の提起やその見通しも十分視野に入れる必要があるが、行政書士は行政訴訟の代理人たる資格を有さず、訴訟提起やその見通しを立てるのに必要な専門性及び技術を欠いている。行政不服申立て等の代理人となるには、より高度な専門性と慎重かつ適切な判断が不可欠であり、この責任を果たしうるのは、法科大学院・司法試験・司法修習を通して能力が十分に担保されている行政訴訟の専門家である弁護士しかない。実際に弁護士は、行政による違法・不当な処分から社会的弱者を救済する実績を上げるなど、すでに行政手続業務にも代理人として相当関与しているところ、弁護士人口が毎年相当数増加していくことが見込まれ、行政不服申立ての分野にも弁護士がより一層関与していくことが確実に予想される中、行政書士法を改正して行政書士の業務範囲を拡大する必要性は欠けている。
  以上のとおり、当会は、前回同様、行政書士に対する行政不服申立代理権の付与に強く反対するものであり、現状に鑑み、再度、その旨の声明を発するものである。

    2014年(平成26年)3月27日

京  都  弁  護  士  会

会長  藤  井  正  大



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