1年目を振り返って


  早いもので、弁護士として働き始めてから1年が経ちました。毎日新しいことだらけで、右往左往しているうちに、1年経ってしまったというのが、正直な感想です。
たった1年ですが、この1年間で最も印象に残っているものは、少年事件での弁護人・付添人活動です。
  もともと少年事件にそんなに興味があった訳ではありません。正直なところ、少年というと、中学の時、上着の丈の短い学ランを着て、廊下を原動機付き自転車で走っていたり、意味もなく何でも教師に反抗している不良のイメージがありました。ですので、生意気そうで、弁護士の言うことなんて聞いてくれそうにないし、心を開いてくれないんじゃないかと思っていました。
  しかし、実際に、少年事件を担当してみると、上記のようなイメージは吹き飛んでしまいました。確かに、最初は、あまり心を開いてくれず、話をしてくれませんが、何度も会っているうちに、自分の生い立ちや非行に至った事情、家族のこと、将来のこと等、たくさん話をしてくれて、面会に行くと嬉しそうにしてくれるようになります。また、非行事実についても、鑑別所や調査官からの働きかけも相まって、大人の被疑者・被告人よりも、ずっとしっかりと自分の頭で考え、自分のしたことを受けとめられるようになっていきます。私の担当したある少年は、審判の前日に、「自分のケツは自分で拭く」と言って、審判でどんなに厳しい判断がなされても、それは自分のしたことの結果だから、きちんと責任をとるんだと話してくれました。いざ刑罰を受けるとなると、大人でもなかなかこんなことは言えません。
  少年のそういう姿を見ると、いつも、この子がきちんと立ち直れるように一生懸命頑張ろうと心から思います。もっとも、付添人や弁護人として、弁護士が関われるのは、少年の人生にとって、ほんの一瞬です。少年の非行に至った原因が家族関係にあったとしても、今まで長年にわたって積み重ねられた家族の複雑な事情を付添人や弁護人の力で解決することは難しいというのが現実です。それでも、付添人や弁護人が就くことで、少年の抱える問題を解決するきっかけを与えられたら、被害者のことや自分のしたことの重み、自分の将来等について立ち止まって考えてくれたら、と願って取り組んでいます。
  少年事件は、とっても手間がかかって、他の業務と折り合いをつけるのも大変ですが、一生懸命やればそれだけの成果が出るもので、とてもやりがいのあるものだと思います。まだまだ経験は浅いですが、これからも積極的に取り組んでいきたいと思っています。

相井  寛子(2010年5月10日記)

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