声明

労働者派遣法の「改正」案に反対し、抜本的改正を求める会長声明(2008年11月25日)


  本年11月4日、「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律等の一部を改正する法律案」(以下「派遣法改正案」という。)が閣議決定され、臨時国会に上程された。
  しかるに、今回の派遣法改正案は、以下のとおり、派遣労働者の保護に向けた抜本的改正というには程遠い内容であるばかりか、逆に派遣労働の規制緩和ともいえる内容を含むものとなっている。

1.日雇い派遣について
日雇い派遣については、これを全面的に禁止するのではなく、30日以内の期限付雇用労働者の派遣を原則禁止するに止まっている。派遣先と派遣元との「日々派遣契約」を禁止していないため脱法を許す恐れがあるとともに、政令で定める広範な例外業務を認めて日雇い派遣を公認している。また、30日を超えれば期限付き雇用が可能であるため、社会保険に加入できない派遣労働者の存在を容認することになるなど、この程度の規制では派遣労働者の不安定雇用を是正することにはならない。

2.登録型派遣について
派遣先に仕事があるときだけ雇用され仕事がないときには無収入となってしまう不安定な雇用形態である登録型派遣について、禁止の方向とはしておらず、不安定雇用を是正しようという姿勢が見られない。

3.マージン率について
派遣料金のマージン率については、上限規制を設けず、平均的なマージン率の情報提供義務を課すに止めているため、派遣労働者の低賃金を是正し待遇を改善することにはならない。

4.直接常用雇用を促進する措置について
派遣先での直接常用雇用を促進する措置については、派遣労働者の直接雇用みなし規定の導入は見送られており、派遣元事業主に単なる努力義務を課すに止めている。直接雇用の努力義務は現行の派遣法でも規定されているが、これらの規定によってはこれまで直接常用雇用の促進はほとんど進んでいない。みなし規定は直接常用雇用の促進に必要不可欠であり、導入にふみきるべきである。

5.期間の定めのない派遣労働契約について
期間の定めのない派遣労働契約については、事前面接を解禁し派遣先の直接雇用申込義務の適用対象外にするとされており、直接常用雇用の促進をするどころか、むしろそれに逆行する内容まで盛り込まれている。このような規定の導入は、派遣労働者の保護を強化するという今回の法改正の趣旨に反するものであり、到底受け入れられるものではない。

  その他、今回の派遣法改正案は、派遣労働者の賃金等の待遇改善策について、派遣先の同種労働者との均等待遇を義務付けていないなど、全体として抜本的改正には程遠い極めて不十分な内容となっている。

  ところで日弁連は、本年10月3日、人権擁護大会において「貧困の連鎖を断ち切り、すべての人が人間らしく働き生活する権利の確立を求める決議」を満場一致で採択し、非正規雇用の増大に歯止めをかけワーキングプアを解消するために、特に、労働者派遣について、日雇い派遣の禁止と派遣料金のマージン率に上限規制を設けることが不可欠であり、派遣対象業務を専門的業務に限定することや登録型派遣の廃止を含む労働者派遣法制の抜本的改正を行うべきである、と提言した。
  しかしながら、今回の派遣法改正案は、日弁連の提言が目指す「すべての人が人間らしく働き生活する権利」を保障するものには程遠く、むしろ労働者保護に逆行し、派遣労働の規制緩和すなわち改悪ともいえる内容を含むものとなっているのである。
よって当会は、今回の派遣法改正案に反対するとともに、国会に対して、審議を尽くし、派遣労働者の雇用と生活の安定のために、日雇い派遣の禁止や均衡処遇にとどまらない労働者派遣法の抜本的な改正を早急に行うことを求める。


2008年(平成20年)11月25日

京都弁護士会              

会長  石  川  良  一



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