出資法の上限金利引下げに関する声明(1999年12月3日)


  日栄、商工ファンドに代表される高利商工ローン業者による過剰貸付や強引な取立てに対する社会的批判の高まりを受けて、今臨時国会において出資法を改正し年40.004%の上限金利を引き下げる議員立法の論議が進められている。
  当会は本年4月、「貸金業の金利引下げに関する決議」を採択し、貸金業の高金利の是正が急務であるとして、出資法の上限金利を利息制限法の金利まで引き下げること、日賦貸金業者につき109.5%、電話担保金融業者につき54.75%という特例を廃止すること等を求めた。今臨時国会中に、大幅な金利引下げ等の法改正を是非とも実現すべきである。
  問題は上限金利の引下げ幅である。これについて、民主党が前の国会でほぼ利息制限法のレベルまで引き下げる出資法改正案を国会に提出していた。最近、公明党が25%、23%、20%という3段階の案を出し、自民党が30%の案を出した。そして今般、29.2%(手数料・保証料等の名目の費用を加えた実質金利ベース)で与党三党が合意したと報じらた。
  しかし、29.2%程度では上限規制として不十分である。日栄などの商工ローン業者の金利が保証料・手数料などを加えると30%を優に超えており、中小サラ金業者の金利が40.004%の上限に近いところで設定されているような異常な現状が若干改善されるものの、多重債務者被害、商工ローン被害の根絶には程遠い弥縫策である。大手サラ金業者などの貸出金利は、20%台の後半〜30%である。現在の空前の超低金利水準を考えれば、30%程度でも異常に高い水準である(現状においては利息制限法の金利水準の見直しも必要である)。300万円の元金で年90万円程度、1000万円では300万円程度になる。消費者にとっても中小・零細事業者にとっても過酷な数字である。このような高金利が、債務者の借金が雪だるま式に膨れ上がり債務者を自殺にまで追い込む多重債務被害、債務者の返済能力を超えて次々と貸付を行う貸金業者の過剰与信体質、返済が滞ると債務者や保証人に対し容赦ない取立てを行う違法取立てを生み出すのである。
  高金利が生み出す多重債務被害や商工ローン被害の実態を直視し、高金利の是正を弥縫策に終わらせないことが、今、政治に求められている。
  したがって、出資法の上限金利は、利息制限法の制限利率の水準まで引き下げるべきである(現在では何ら合理性の認められない異常高金利を容認する日賦貸金業者等についての特例を直ちに廃止すべきことは言うまでもない)。
  なお、商工ローン問題において、根保証が保証人をも巻き込んだ深刻な被害を発生させていることから、保証人への通知義務だけでなく保証契約についてより強力で実効的な規制をする貸金業法改正も、早急に検討されるべきである。



1999年(平成11年)12月3日

京都弁護士会

会長    村  山     晃


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