安田弁護士に対する保釈許可決定取消しについて(1999年8月11日)


  本年6月11日、7月6日及び7月30日、東京高等裁判所は、安田好弘弁護士に対し、受訴裁判所である東京地方裁判所が三度にわたってなした保釈許可決定をいずれも取消した。
  この事件は、同弁護士が、平成10年12月6日、強制執行妨害罪の被疑事実で逮捕され、同年12月25日、起訴されたものであるが、既に11回の公判を経て、審理が相当程度すすんでいるにもかかわらず、勾留は既に8ヶ月余の長期に及んでいること、本件の法定刑は2年以下の懲役又は50万円以下の罰金で、権利保釈の事案であることなどからすれば、東京高等裁判所が「罪証隠滅すると疑うに足りる相当な理由がある」として、保釈許可決定を取消し、保釈請求を却下したことは極めて遺憾である。
  近時、保釈率は著しく低下し、公訴事実を争うと保釈が許可されない運用が多くなっており、いわゆる「人質司法」と批判されているところである。このような現状は、被告人の防禦権を侵害するものであり、到底容認できない。また、逮捕・勾留について定めた市民的及び政治的権利に関する国際規約第9条1項の規定は、勾留の必要性を基礎づける罪証隠滅のおそれは抽象的なものでは足りず、具体的・現実的なものでなければならないと解釈されており、上記高裁決定は、本規約に反するものである。
  今年は、刑事訴訟法制定50年の年である。私たちは、刑事手続において刑事訴訟法の本来の趣旨である被疑者・被告人の人権の保障が全うされるよう、関係機関に強く要望するとともに、その実現のため全力を尽くすことをここに表明する。



1999年(平成11年)8月11日

京都弁護士会

会長    村  山     晃


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