「立憲主義を否定・破壊する閣議決定に断固抗議する会長声明」(2014年7月24日)


  当会は、「安全保障を巡る憲法問題と立憲主義の危機に関する会長声明」(本年6月10日)において、集団的自衛権を容認する「解釈改憲」を行うことには立憲主義の見地から重大な問題があると指摘した。ところが、本年7月1日、政府は、集団的自衛権の行使を容認する閣議決定を行った。この閣議決定は、当会が指摘した上記問題点を無視するものであり、到底容認できない。
  安倍首相は、本閣議決定をした同日の記者会見において、本閣議決定は、憲法の規範性を何ら変更するものではないと述べた。しかし、歴代政府は、日本国憲法制定後、一貫して、憲法9条2項の解釈として集団的自衛権を認めることはなかった。憲法9条2項の規範的本質は、集団的自衛権の行使、即ち、海外での武力行使の否定にある。本閣議決定は、集団的自衛権・海外での武力行使を認める点で、明らかに憲法9条2項の規範性を覆している。
  本閣議決定は、その解釈により憲法9条2項改正と同等の結果を得ようとしている点で、憲法改正手続を定めた憲法96条1項を潜脱し、立憲主義を否定しているのである。
  更に、本閣議決定は、「政府の憲法解釈には論理的整合性と法的安定性が求められる」と述べる点にも看過し難い問題がある。本閣議決定は、集団的自衛権の行使を否定した1972年(昭和47年)の政府資料を根拠として、集団的自衛権を行使することが憲法上許容されると結論づけているのである。集団的自衛権を明確に否定することが記載されている政府資料に基づき、そこから集団的自衛権を認める結論を導くという憲法解釈に、論理的整合性や法的安定性など認められるはずがない。
  政府は、本閣議決定をしたに止まらず、今後、集団的自衛権を実際に行使できるようにするための国内法整備を進めていくとしている。当会は、立憲主義の更なる破壊ともいうべきこのような動きに対し、断固反対し続けることを宣言する。

      2014年(平成26年)7月24日

京  都  弁  護  士  会

会長  松  枝  尚  哉



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