衆議院で可決された盗聴法案に反対する声明(1999年6月2日)


  昨日(6月1日)、衆議院本会議で盗聴法案を含む組織的犯罪対策法案が可決され、法案は参議院に送付されたが、極めて遺憾である。
  当会は、昨年4月1日に常議員会決議をあげて、盗聴法案は国民の基本的人権を侵害する危険が極めて高いものであることを指摘し、今日まで様々な反対運動を展開してきた。
  今回、衆議院で可決されるに際し、若干の修正がなされたが、当会が指摘してきた盗聴法案の本質的な問題点は何ら解消されていない。対象とされる犯罪の数は減ったものの、依然として予備的盗聴、事前盗聴、別件盗聴を認めているため、現に犯罪が行われていないにもかかわらず、しかも、犯罪と関係のない通信についても盗聴することが可能となっている。また、2人以上による犯罪の可能性さえあれば盗聴の対象とされ、犯罪者が電話をする相手方であれば誰でも盗聴の対象となるため、犯罪組織だけでなく一般市民や団体、労働組合、マスコミなども盗聴と対象となる。盗聴される通信施設も公衆電話や携帯電話、ファックス、インターネットなどすべてに及び、盗聴期間も事実上無制限となっている。立会人を常時付けることにはなったが、立会人には被疑事実は示されず、しかも、立会人は通信内容を聞くことができないためため、犯罪と関係のない通信の盗聴を防止することには役立たない。結局、警察がNTTなどの通信施設内においてほとんど制約を受けることなく盗聴できることになっている。このような盗聴法案は、修正されたとはいえ憲法21条(通信の秘密を保障)や35条(捜索場所や差押物の明示を要求している令状主義)に違反する疑いが極めて強いものである。
  そこで、当会は、参議院での徹底した十分な審議を求めるとともに、盗聴法案の廃案を求めるものである。


1999年(平成11年)6月2日

京都弁護士会

会長    村  山     晃


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