「貸金業規制緩和に反対する会長声明」(2014年9月25日)


  上限金利の引き下げ及び総量規制等を規定した現行貸金業法が施行されてから4年あまりが経過した。現行貸金業法は、自己破産や自殺の急増など深刻な社会問題となっていた多重債務問題を解決すべく、2006年(平成18年)12月に自民党政権下で与野党全会一致で成立した画期的な法律である。それにより、法改正時からこれまでの間に、5社以上の借入れを有する多重債務者が約230万人から約16万人に、自己破産者(自然人)は17万4861人から8万1136人に、いずれも激減している。また、多重債務による自殺者は法改正時の1973人から688人に大幅に減少しており、多重債務対策は自殺対策としても機能していると評価されている。このように、貸金業法の改正によって、多重債務問題が大きく改善していることは明らかである。
  当会も、多重債務問題の解決のために活動を行ってきた。2009年(平成21年)10月29日には改正貸金業法の早期完全施行等を求める会長声明、2012年(平成24年)7月19日には改正貸金業法等の見直しに反対する会長声明を出している。また、2006年(平成18年)4月から多重債務相談の初回相談を無料化し、2011年(平成23年)3月からは多重債務電話無料相談を実施するなど相談体制の充実を図り、多重債務者の救済及びその生活再建に向けた活動を行ってきたところである。
  しかるに、報道によると、自民党において、銀行融資を受けにくい中小零細企業や個人事業主が一時的な資金を消費者金融から借りにくくなっているとの判断を根拠として、一定の条件を満たす貸金業者を「認可貸金業者」と認定したうえで、認可貸金業者に限って、上限金利を年29.2%まで引き上げ、総量規制からも除外するという貸金業法の改正案が検討され、今秋の臨時国会への提出が目指されているとのことである。
  しかしながら、現行貸金業者の成立前、年29.2%もの高金利により分割返済金の大部分が利息に充当されて元本の返済が進まず、返済のための借入れが繰り返されたり、客観的に返済可能な金額を大きく上回る過剰融資が繰り返されたりしたことにより、返済不能となって自己破産や自殺に追い込まれる者が多数存在したことは周知のとおりであり、今回の貸金業法の規制緩和の動きは多重債務問題を改善してきたこれまでの流れに逆行するものに他ならない。中小零細企業や個人事業主にとって必要なのは、破綻につながる高金利の貸付を簡単に借りられるようにすることではなく、生活や事業を破綻させない低金利の融資制度を拡充することである。現行貸金業法の規制を緩和し、かつての高金利・過剰融資を許容することは、再び深刻な多重債務問題を招来するものであり到底許されない。
  当会は、多重債務問題の解決に向けて努力してきたものであり、今後も高金利の復活と過剰融資を許容する貸金業法の規制緩和には断固反対する。

      2014年(平成26年)9月25日

京  都  弁  護  士  会

会長  松  枝  尚  哉


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