「国選付添人を積極的に選任することを求める会長声明」(2015年2月17日)


  少年法の一部を改正する法律(平成26年4月18日法律第23号。以下「改正法」という。)が、2014年(平成26年)6月18日から全面施行され、国選付添人の選任対象事件が、従来の「故意の犯罪行為により被害者を死傷させた罪」又は「死刑又は無期若しくは短期二年以上の懲役若しくは禁固に当たる罪」から、「死刑又は無期若しくは長期三年を超える懲役若しくは禁固に当たる罪」へと大幅に拡大された。
  日弁連及び当会は、これまで観護措置がとられた全ての少年に対して国選付添人を選任するよう求めてきた。改正法は、ぐ犯をはじめとする多数の国選付添人非対象事件が存する点や、国選付添人選任が家庭裁判所の裁量とされている点など、国選付添人制度に関して日弁連及び当会が要望してきた内容に照らせば不十分と指摘せざるを得ない点が存するものの、当会としては、法改正は大きな前進であると評価する。
  しかし、改正法施行後、国選付添人選任対象事件であるにもかかわらず、家庭裁判所の裁量によって国選付添人が選任されなかった事案が多く見られる。当会の調べでは、2014年(平成26年)11月末時点で、家庭裁判所が国選付添人を選任する割合は、全国平均でも半分程度に過ぎないところ、京都家庭裁判所の場合は、さらにそれを下回る水準である。当会は同家裁に対して、国選付添人を積極的に選任するよう求めてきたが、同家裁は明確な回答をしない。
  裁量的国選付添人の対象は、観護措置がとられている少年の事件に限られているところ、家庭裁判所は、観護措置をとる際には、当該少年について、心情の安定・情操の保護を図りながら身体を拘束し心身の鑑別を行うことが必要である理由が十分に存すると判断しているはずである。そのような少年については、付添人によって保護環境の調整等がなされるべき必要性も同様に高いというべきであるから、観護措置が必要な理由が十分に存する少年については、国選付添人を選任する必要性があるというべきであり、「観護措置が必要な理由が十分にあるが、国選付添人は不要である」という事例は稀なはずである。
  あえて指摘するまでもなく、成人に比べて防御能力が劣り人格も未熟である少年に対する国選付添人の援助は、「少年の健全な育成を期し、非行のある少年に対して性格の矯正及び環境の調整に関する保護処分を行う」(少年法第1条)とともに、被害弁償等の被害者対応を適正に進める上でも必要不可欠である。
  これまで付添人の必要がある少年については、日弁連の特別会費を原資とする日弁連委託援助制度を利用して付添人の受任がされてきたが、本制度はあくまでも対象事件が拡大されるまでの補完的な制度であるから、同制度が存在することが国選付添人を選任しない理由となっているのであれば、全く適切ではない。
  当会は、国選付添人選任対象事件が拡大したとしても家庭裁判所が裁量によって国選付添人を選任しなければ、改正法は何ら少年の権利保護に資さないことになりかねないことを危惧し、国選付添人が積極的に選任されるよう強く求めるものである。

      2015年(平成27年)2月17日

京  都  弁  護  士  会

会長  松  枝  尚  哉



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