「エコ・コンパクトな都市構造を目指した都市計画の見直しについての意見書」(2015年3月26日)


2015年(平成27年)3月26日

京都市長  門  川  大  作  殿

京  都  弁  護  士  会

会長  松  枝  尚  哉
  


エコ・コンパクトな都市構造を目指した都市計画の見直しについての意見書



意見の趣旨


1  京都市は、本件都市計画の見直しにより、各地区の容積率、建ぺい率、高度地区を変更すべきではない。
2  京都市は、本件都市計画の見直しによるのではなく、各地区の土地利用の実情に合わせた用途地域の変更を行うことを内容とする都市計画の見直しを行うべきである。
特に、高度地区の指定、景観規制が実施されていないところは、速やかにこれらを実施すべきである。
3  京都市は、久世高田・向日寺戸地区地区計画を同地区の土地利用の実情に合わせて変更すべきである。

意見の理由

第1  はじめに
京都市は、2012年(平成24年)2月に策定した京都市都市計画マスタープランにおいて「エコ・コンパクトな都市構造」を目指すとしていることを根拠として、交通拠点である駅周辺において都市機能を集積させるべきとして、用途地域や容積率等の都市計画の見直しについて検討を進めている。
2015年(平成27年)1月15日付で「駅周辺における地域地区の見直し案」を示したが、そこでは、現行の容積率、建ぺい率、高度地区について大幅な規制緩和を図ることが明らかとなった。
すなわち、京都市は、駅を中心としたエコ・コンパクトな都市構造を実現するに当たり、駅の特性を、「市内外から多くの来訪がある賑わいと魅力を有する駅周辺」(広域拠点)、「市内からの来訪があり、地域の生活や活動の場となる駅周辺」(地域複合拠点)、「日常生活を支えている施設が立地する地域」(日常の生活を支えている地域)の3つに分類したうえで、これらの特性に応じた都市機能の集積について検討するとしている。そして、分類ごとに見直し点検対象駅を選定し、広域拠点として2地区12駅、地域複合拠点として3地区7駅、日常の生活を支えている地域として4地区10駅を定めた。また、これとは別に、魅力つくり拠点として11地区22駅を定めた。
今回その中から、京都駅周辺エリア、太秦天神川駅周辺、竹田駅・くいな橋駅周辺、桂川駅・洛西口駅周辺、らくなん進都を選定し、都市計画の見直し(以下「本件都市計画の見直し」という。)を行うとし、今回見直しを行わない駅周辺については、今後の動向を踏まえながら、引き続き検討するとしている。
ところで京都市は、2007年(平成19年)9月1日、「50年後、100年後も光り輝く京都を目指して」新景観政策を施行した。そこにおいては、建築物の高さなど建築物に対する制限を見直し、高度地区の変更(高度地区の計画書の策定)を行って思い切ったダウンゾーニングを実施し、建築物の高さ規制を厳格化した。
その上で、地域の良好な景観の形成や周囲の市街地に支障がないものとして市長が許可した建築物については、建築物の高さの最高限度を超えることができるものとして、「京都都市計画(京都国際文化観光都市建設計画)高度地区の計画書の規定による特例許可の手続に関する条例」によって特例許可制度を設け、建築物単位で、建築の合理性・必要性が認められる場合にのみ、例外的に高さ規制を緩和することとした。
そこで当会は、本件都市計画の見直しについて、京都市が将来に亘って市民が住み続けられる都市となることの観点、および新景観政策との整合性の観点から検討を加え、意見を述べるものである。

第2  京都市においては、駅周辺に都市機能を集積させる必要性のないこと
1  サスティナブルシティ(持続可能な都市)とコンパクトシティ
(1) サスティナブルシティ(持続可能な都市)
サスティナブルシティとは、将来にわたって、社会と経済と環境の3つの側面が相互に依存しつつそれぞれに持続可能性を実現する都市をいう。
1992年の地球サミットで提唱された「持続可能な開発」の都市版であり、その具体的内容は1996年にEUにおいて「欧州サスティナブルシティ報告」として発表され、EUの都市政策として既に確立した考え方である。
(2) コンパクトシティ
急速なモータリゼーションにより、特に地方都市では、自動車利用を前提とした施設が郊外に数多く建設されるようになり、自動車利用に対応できない中心市街地が衰退する一方で、都市が無秩序かつ低密度に郊外に拡大していった。
そこで、昨今の少子高齢社会を前提として、特に地方都市において持続可能な都市を実現すべく目標にされるようになったのが、コンパクトシティである。これは自動車の利用を中心としないまち、都市の空洞化や拡散を抑えたまち、歩いて楽しいまち(ウォーカブルシティ)、農村との連携が図られた自然や環境に優しいまちを指す。
すなわち、コンパクトシティは、本来はサスティナブルシティの1つであるが、基本的には、郊外にスプロールアウトすなわち低密度で無秩序に拡散した地方都市を有効に縮退(スマートシュリンク)させることを企図した概念である。
2  京都市に、コンパクトシティという概念をあてはめることの不合理性
確かに、京都市単体ではなく、京都市とその衛星都市を含めた「都市圏」で見た場合、コンパクトシティという概念は有用であろう。
すなわち、京都都市圏においては、JRや私鉄各線の沿線において、駅前が低密度である一方で、駅から遠く離れた田園を無計画に開発した結果、まだら模様の土地利用が見受けられる。
このような場合であれば、駅から遠いところを整理して都市圏を縮退させ、それを低密度の駅周辺に集約させることにより、市民が都市インフラをはじめとする良好なサービスを持続的に享受しうるとともに、行政コストも同時に削減させることが可能となるため、持続可能な都市を実現することができる。
しかし、京都市単体で見た場合、京都市は1000年以上の長きに亘って一体性をもった都市として発展してきた都市であり、南西部の一部地域(この地域には駅がほとんどない。)を除いて低密度で無秩序に都市が拡散しているという状況にはない。市内にJRや私鉄各線の駅が多数あるが、いずれも駅間距離が短く、駅前の区域同士が連続していているのであって、島状に分裂している状況でもない。
むしろ京都市単体においては、各駅前とその周辺地域が連担して全体として一体を形成している。
したがって、駅前に高度利用地を集積して周辺地を縮退させるというような契機はないというべきであるから、そもそもコンパクト化をめざさなければならない社会的事実がないというべきである。
3  「京都市駅周辺等にふさわしい都市機能検討委員会」での検討結果の不合理性
(1) 今回の都市計画の見直しは、京都市駅周辺等にふさわしい都市機能検討委員会(以下「検討委員会」という。)での検討結果、特に「駅周辺にふさわしい都市機能の集積のあり方について(提言)」(以下「提言」という。)の考え方を基本としてなされている。
2012年(平成24年)2月に改定された京都市都市計画マスタープランでは、市街地規模は拡大せず、鉄道駅周辺に都市機能を集積するというエコ・コンパクトな都市構造にするとしている。これに基づき検討委員会も、駅周辺の都市機能の集積を検討し、提言を行っている。
(2) しかし、同マスタープランにも示されているように、エコ・コンパクトな都市構造を行うのであれば、駅周辺の都市機能の集積にあわせて市街地規模の拡大を防止することについての施策がなければならないはずであるが、提言では市街地規模の拡大防止の視点が入っていない。
検討委員会及びその提言に基づく今回の計画見直し案は、いずれも主要な駅周辺における都市機能強化という視点から容積率、建ぺい率及び高さ制限等の緩和がなされている。
しかしながら、主要な駅周辺の規制を緩和するだけではコンパクトなまちづくりを達成することはできないことは明白であり、辺縁地の市街化を防ぎ、京都らしいまちなみを保全することについても検討されなければならないところ、このような計画の見直しは予定されていない。
そうすると、本件都市計画の見直しは、主要な駅周辺についてより都市化を進めるだけのものであって、エコ・コンパクトな都市構造を標榜するマスタープランとは合致しないと言わざるを得ない。
(3) そもそも京都市内の駅を3つに分類すること自体に疑問があること
ア  今回の見直し案では、京都市内にある103の鉄道駅を、市民の暮らしを支える視点として、駅の特性により「広域拠点」、「地域複合拠点」、「日常の生活を支える地域」に分類して検討を行っている。
今回はそのうちの「広域拠点」として1地区、「地域複合拠点」として3地区を見直し、これと併せて、都市の魅力を高める視点から「魅力づくり拠点」を設定し、2地区を見直すとするものである。
イ  しかしながら、このような分類は、狭い地域に住居と商業と観光などの要素が詰まった京都市には不適当である。
すなわち、「広域拠点」とされる中京区を中心とする都心部エリアは、古くから市民の生活が営まれ、これに伴うまちなみや歴史的建造物が多数ある一方で商業や観光の中心ともなる場所であり、これを「広域拠点」として大きく括ることには無理がある。
特に、都心部エリアを幹線道路沿道エリアと職住が共存するエリアに分類する点については、幹線道路沿道エリアにおいても職住が共存する部分が多数残っていることを無視しており、妥当ではない。
ウ  このような不適切な分類の結果、大半の駅が「日常の生活を支える地域」に分類されるにもかかわらず、今回の見直し案ではこの地域における見直しが全くなされず、「今後の動向を踏まえながら、引き続き検討」するとされている。
そうすると、最も該当する駅が多く、市民にとって影響のある地域が今後どのように変更されるのかの見通しが立たないまま都市計画の変更が進むこととなり不当である。
また、「日常の生活を支える地域」は良好な住環境の維持と市街化拡張の歯止めとなるべき都市計画を策定すべき地域であり、エコ・コンパクトな都市構造を構築するために重要であって、これを無視して都市化のみを進めるべきではない。
4  まとめ
このように、京都市内において、駅から離れた地域を市街地から縮退させ、それを駅周辺に集積させなければならないという社会的実態がない以上、今回の都市計画の見直しは、その必要性が認められず、また改定後の京都市都市計画マスタープランとも矛盾する。
したがって、これを前提とする容積率、建ぺい率、高度地区の変更の必要は認められない。

第3  新景観政策とも整合しないこと
1  新景観政策における高さ規制について
京都市において、2007年(平成19年)9月から施行された新景観政策においては、三方の山並みや京町家の伝統的な建物との調和を図るために田の字地区の高さ制限を現行の45mから31mに、職住共存地区の高さ制限をそれまでの31mから15mに引下げることを含めた市街地全域での高さ規制の見直し(一定の地域を除いて引下げ)が行われた。
高度地区の区分も、45m地区が廃止されるとともに、新たに12m、25mの地区が設けられ、10、12、15、20、25、31mの6段階に細分化した。
これは、「建物の高さは、都市の景観や市街地の環境を形成する重要な要素です。そのため、広範囲で高さ制限を以前より引き下げ、同時に高さの制限を地域の特性に合わせて細分化しています。」と説明されている(京都市の景観政策  時を超え光り輝く京都の景観づくり(平成19年9月~)より)とおり、建物の高さは、都市の住環境・景観・機能の整備にとって極めて重要な要素だと考えられるからである。
すなわち第1に、高さ規制の強化により、世界遺産をはじめとする歴史的建造物や京町家等との調和、三方の山々や河川沿いの眺望景観の保全等を図ることができる。
第2に、高さ規制の強化により、山すそ周辺に広がる低層住宅地にふさわしい高さの設定と、低層住宅地を通る幹線道路沿道との高さの格差の抑制を行い、隣り合う建物同士の高さの調整により、住環境の保全、整備を図ることができる。
なお、高さ規制を実施したとしても、商業やものづくり、学術研究、文化・交流、医療・福祉、安心・安全など市民生活や事業活動に必要な施設整備において、必要な高さと周辺の状況を考慮しながら、都市機能の充実・誘導を図ることは可能である。
2  新景観政策における容積率・建ぺい率の規制について
また、建物の高さのみならず、建物の容積率、建ぺい率もやはり都市における住環境・景観・機能の整備についての重要な要素となる。
建物の高さを抑えることは、都市における建築物の建築面積を制限する要素となることから、同時に容積率、建ぺい率を緩和する方向で見直さなければ、従来と同程度の建築面積を確保できないことが明らかであるが、新景観政策においては、建物の高さを大幅に制限しつつ、容積率、建ぺい率についてはこれを緩和することは選択されなかった。
このことは、新景観政策においては、高さを規制することによってそれまでの建築面積を下回る結果となったとしても、都市機能の整備において支障は生じないと判断されたことの結果であると解することができる。
現に、新景観政策の実施により、必要な都市機能の整備が図られない事態となっているといった実情はないと考えて差し支えない。
そして、新景観政策が施行時と比較して、今後は人口の減少が明らかであるから、将来に亘って反転需要が逼迫する可能性は小さい。
そうすると、新景観政策の施行時点においては、容積率・建ぺい率は緩和しないという積極的な選択がなされるとともに、現在および将来においてもそれを変更しなければならないような社会実態はないということができる。
3  まとめ
しかしながら、本件都市計画の見直しは、建物の高さの規制を緩和し、容積率・建ぺい率を緩和することを内容とするものであり、新景観政策と整合しない。
もちろん、一定の政策が選択された後、事情によりこれが変更されることはあろう。しかし、政策を変更するには合理的理由が必要であり、それを支える立法事実がなければならない。
ところが、第5で検討するとおり、本件都市計画の見直しには、そのような合理的理由ないし立法事実は認められない。

第4  都市計画は、土地利用のあり方をはじめとした地域の実情を前提として、将来の都市像を描くものでなければならないこと
サスティナブルシティの実現、すなわち都市において市民が持続可能な居住を確保するためには、現在における土地利用が継続的に可能であること、将来における当該地域の変化が受容可能であることが必要である。
現在の土地利用が激変してしまったり、一定のまとまりのある地域が分断されると、人は安心して当該地域に住み続けることはできないからである。
したがって、都市計画は、①土地利用のあり方をはじめとした地域の実情を踏まえたものであること、②将来にわたって漸進的な変化は可能であったとしても、激変を許すものでないことが必要である。

第5  各地区ごとの都市計画の内容の検討
そこで、以上の諸点を踏まえ、本件都市計画の変更の内容について検討する。
1  京都駅周辺エリアについて
(1) 見直し箇所①の範囲では、容積率を400%から600%に引き上げられる提案であるが、現在この地域では建物は少なく、大型マンションが2棟あるほかは小さな建物が点在し、その他は空地である。
このような再開発型の地域であれば、容積率を緩和することを先行させるのではなく、この地域のまちづくりを計画的に主導していくべきである。
さらに、この範囲および見直し箇所②③の一部は、京都市眺望景観創生条例により、渉成園の庭園からの眺め (神社、寺院等の庭園において、その背景にある自然を当該庭園の一部として一体的に取り込んだ景観)として、眺望景観保全地域に含まれている。
高く容積率の大きな建物の景観の調和に対する影響は、デザイン0の制限によって抑制することができない。このエリアで高さを上げ、容積率を600%に変更するなど、大きく容積率を割増する変更を許せば、眺望景観を害する多くの建物の建築を許すことになる。京都市がこのエリアの周辺にある寺社仏閣を観光資源とすることは大変有意義であるが、今回の変更によって、境内や庭園からの眺めが損なわれる等、その観光資源に悪影響を及ぼす可能性がある。
(2) 見直し範囲②の範囲でも、容積率を400%から600%に引き上げられる提案であるが、すでに京都駅ビルは巨大であってこれをさらに建て詰めを許すような変更は許されるべきではない。
(3) 見直し箇所③の範囲では、高さが31mに変更される提案であるが、そもそも高さ規制を緩和しなければならない必要性が不明である。仮にそれが認められるとしても、現行の20mから25mをとばして一気に31mに変更することは余りに劇的な変更であり、適切ではない。
この範囲では、既に京都市立芸術大学の移転計画があるが、個別に必要性を検討して特例許可制度を用いる方法もあった。敢えて、大学移転に関係のない部分まで併せて変更する必要性については十分検討すべきである。
(4) 見直し箇所④の範囲では、現行の高さが20mであるところを25mに変更するとのことであるが、④の範囲の外側の東西の地域は20mであることから、④の範囲のみ、5mも突き出た形での建物の建築を許すことになる。
良好な景観は、周辺との調和が図られていることにあるが、京都市が自ら凸凹のまちなみを誘導するような変更をして、良好な景観が保たれるはずがない。
2  太秦天神川駅周辺について
(1) ①については、商業地域に変更することはありうるとしても、建ぺい率を80%に緩和することの必要性については、再検討されるべきである。
(2) ②の北側には住居が立ち並ぶ第一種住居地域があり、この周辺において容積率を緩和することには合理性がない。むしろ容積率を抑え、住宅と施設との調和を図るべきである。
(3) ②及び③の南側も住宅が立ち並ぶ地域があり、この部分の容積率を緩和することについても同様の理由から不合理である。用途地域を変更するとしても、地域の現状にあった変更にすべきであり、そのためには用途地域の変更のみで足りる。
(4) ③については、高度地区の種別の変更(20m第3種から20m第4種)をし、北側斜線規制を撤廃しようとしているが、③の周囲が住宅であることを鑑みれば、このような規制緩和についても合理性がない。
3  竹田駅・くいな橋駅周辺
(1) ①の地域のうち名神高速道路南側は、第一種住居地域であるから、これを近隣商業地域として規制を緩和することは、遊戯施設・風俗施設の建築や危険物の貯蔵が可能となるなど、住環境に与える影響が大きいことから許されるべきではない。
また、用途地域の変更に伴い、容積率・建ぺい率の緩和と高度地区の変更がなされるが、現在の容積率200%でさえ有効利用できているかについて疑問であるのに300%に緩和し、建ぺい率を60%から80%に緩和しつつ、高度地区を第4種に変更(北側斜線を緩和)すること等が必要なのかについては大きな疑義が残る。
(2) ②の地域の大部分は第二種住居地域となっており、現況は田畑が多い。また国道24号線沿道や竹田駅・くいな橋駅周辺が近傍地にあることからすると、あえて当該地を近隣商業地域に用途を変更し、容積率を緩和する必要性は認められない。
(3) ③の地域は現在、大部分が準工業地域であり、これを近隣商業地域に変更することは、くいな橋駅周辺の活性化・環境整備という点では、一定の合理性が認められる。
しかし、そうであっても、容積率・建ぺい率の緩和、高度地区を第4種に変更することは、(1)で指摘したことがここでも当てはまることから、その必要性については大いに疑問である。
4  桂川駅・洛西口駅周辺
(1) ①の第一種住居地域のうち中山稲荷線以北について、これを近隣商業地域に変更することは、3(1)と同様に、遊戯施設・風俗施設の建築や危険物の貯蔵が可能となるなど、住環境に与える影響が大きいことから許されるべきではない
変更地以北についても現在住居が建ち並んでおり、この地域は商業施設との隣接を余儀なくされるから、同様に住環境の悪化に繋がる。
(2) ①について、200%の容積率のところを300%に、建ぺい率を60%から80%に増やす必要性については疑問である。
現在の容積率、建ぺい率では不足する合理的理由がない限り、このような緩和は容認されるべきでない。
(3) ①について、高度地区の種別の変更の理由、特に北側斜線規制を撤廃する必要性については疑問である。
規制を緩めるだけでは、新景観政策との整合が図れず、不合理である。
(4) ②について、現在住宅が立ち並ぶ地域が2カ所あるが、これを近隣商業地域とすることには合理性がない。現在の利用状況にあった規制とすべきである。
(5) ③について、第二種住居地域となることから、一見近隣商業地域よりも実情に沿うように見えるが、前者と後者の違いは、前者では劇場・映画館等の遊戯施設および倉庫業倉庫が建築できないというだけで、両者は基本的には建築できる建物の種別に大きな差違はない。
しかし、同地にボーリング場やカラオケボックス、パチンコ店などの遊戯施設や風俗施設はふさわしくないことから、ここは住居専用地域とすべきである。
(6) JR東海道線以東の中山稲荷線沿道地域については、高さ20m、建ぺい率60%、容積率300%とされている。
このように、道路沿線について、その外側地域より緩やかな高度規制とすることは適切ではない。そもそも現状の規制が実情に沿わない程度に緩やかなのであって、上記地域についてさらに規制を緩和すべき事情は存在しないからである。
また、道路沿線だけが高い壁のように建物が建ち並び、その裏側に低い建物が繋がるような都市が、景観上も住環境としても適切ではない。
5  らくなん進都エリア
本件都市計画の変更案は、①③の容積率を200%から300%に、②の容積率を300%から400%にそれぞれ変更し、これとあわせて特別用途地区を指定して、工場、研究施設又は事務所に限り、現行の容積率に100%を割り増しできるようにするというものである。
しかし、上記区域の現状を十分把握した上で容積率の緩和が提案されているか否かについては相当疑わしい。
上記区域については現在の容積率も十分活用できていない可能性があり、さらに容積率を緩和する必要性があるのか不明である。このような状況で容積率を緩和することは許されない。
また、容積率を緩和しつつ、高さ規制をしないことに大きな問題がある。すなわち、上記区域について高さ規制がない状態で容積率を大幅に上げると、上記区域内にのみペンシル型のビルが無秩序に立ち並ぶ可能性があり、景観が大きく害される。
さらにこの区域は、現在景観規制、ガイドラインの制定が全くなされていない。そのような状況のまま、容積率のみを緩和することは許されない。
6  まとめ
以上のとおり、本件都市計画の見直しは、必要性が乏しく、新景観政策と整合しない。
また、各地域の土地利用の実情と大きく乖離したり、実態を反映しない変更も認められることから、変更内容を実態に即したものに見直すことが必要である。
特に、高度地区の指定、景観規制が実施されていないところは、速やかにこれらを実施する必要がある。

第6  久世高田・向日寺戸地区地区計画について
今回、久世高田・向日寺戸地区地区計画は、変更の対象とされていない。
しかし、同地区計画において、A地区約1.5haおよびC地区約7.4haでは建物の高さは90mまで、B地区約2.0haでは同じく45mまで許容される。このような超高度の建物は同地どこか京都市内においては全く不必要・有害であるから、直ちにダウンゾーニングがなされるべきである。
地区計画は、本来地域住民が当該地域の実情に合わせて策定するものであるが、この地区はもともとビール製造会社の敷地であったものであり、A地区とB地区の間には、戸建て住宅群やマンションが挟まれているなど、地区としての一体性に疑問がある。また、その発意が地域住民の意向に沿うものであったといえるかどうかについても疑問が残る。

以  上

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