声明

「原発事故避難者への住宅等の供与に関する新たな立法措置等を求める会長声明」(2015年3月26日)


1  福島第1原子力発電所事故(以下「原発事故」という。)の放射能による健康への影響等を回避するため、被ばくのおそれのある地域から他の地域に避難を余儀なくされた住民は、震災及び原発事故発生から4年が経過した今なお多数に及んでいる。
福島県が公表したデータによれば、2015年(平成27年)2月12日時点における福島県民の避難者は、福島県内への避難者が72,790人であり、県外への避難者は47,219人に上るとされている。また、京都府が公表したデータによれば、2015年(平成27年)2月末日時点において、福島を含めた他府県から808人が京都府内に避難し生活している状況である。

2  これらの避難者にほぼ共通して存在する問題は、避難住宅の確保である。避難者の多くは、震災及び原発事故発生から5年目を迎えた現在も、災害救助法を根拠とした応急仮設住宅として提供されている公営住宅や借り上げの民間賃貸住宅で避難生活を送っており、かつ、避難生活が長期化している。
しかし、仮設住宅は、災害救助法第4条第1項第1号によって、供与期間は原則2年、延長は1年ごととされており、公営住宅や借り上げの住宅の多くも同様である。そのため、避難者は、公営住宅等の供与期間を1年ごとに延長するという現在の運用の元、避難者はいつ住宅の供与が打ち切られ、退去を求められるかも知れないという不安定な生活を強いられている。その結果、中長期的な生活設計を立てることができない状態が続き、避難者の生活再建の妨げとなっている。
また、災害救助法は、公営住宅等の転居・住み替えを認めていないから、超長期的な避難が想定される原発事故において、避難者の生活の変化に対応し転居を認めるべきニーズにも対応できていない。
福島県が2014年(平成26年)1月から2月にかけて行った避難者意向調査の結果においても、避難者の6割以上が住まいについて不安を感じており、また4割以上が「応急仮設住宅の入居期間の延長」を求め、4分の1以上が仮設住宅等の住み替えについて柔軟な対応を求めていることが明らかとなった。
  このように、今回の原発事故による避難のように、長期間の避難の継続を余儀なくされるケースでは、災害現場における緊急対応を前提とする災害救助法の適用では限界があり、避難者の生活再建のためには不十分である。

3  一方で、避難者を受け容れる都道府県側では、主として既存の公営住宅を災害救助法に基づく応急仮設住宅の扱いで供与する方法で対応しており、具体的にどのような条件でどの公営住宅を提供するかは、基本的に当該住宅の管理主体たる各自治体の「自主的な」判断に委ねられている。
しかしながら、災害救助法に基づく救助の実施主体は都道府県であり、被災した都道府県は仮設住宅を建築・管理する責任を負っているところ、国が定めた基準内で建築・管理されている場合は、国にその費用を救助費として負担してもらえる。そのため、国の方針に左右されることを避けられないし、避難先の都道府県からの求償に応じる避難元の県、すなわち福島県の意向も重視される。そのため、避難先の各自治体の判断だけで避難者の実情に即した対応をすることには限界がある。
  従って、各自治体の運用に任せるのではなく、超長期避難も考慮した法律の存在が不可欠である。

4  復興庁が2011年(平成23年)8月11日に定めた「東日本大震災からの復興の基本方針」では、国が実施すべき復興施策として「被災者の居住の安定確保」が掲げられ、「仮設住宅の居住環境を中心とした居住者の状況を踏まえた課題の把握、必要に応じた講ずべき対応等を検討する」ものとされている。
さらに、子ども被災者支援法は、被災者が避難、移住(定住)、帰還のいずれの選択をした場合であっても適切に支援することを基本理念の一つに掲げ、「移動先における住宅の確保に関する施策」を、国は講ずる必要がある旨定めている。これは、避難者が安定した生活基盤を確保でき、将来への見通しを持った生活再建を図れるよう、安定的かつ柔軟な住まいの提供を行うことを目指すものである。
以上に照らせば、東日本大震災及び原発事故の発生から5年目を迎え、避難者の避難生活が長期化している現状に鑑み、国は、災害救助法に基づき原発事故の避難者の実情に合わない措置を繰り返してきた対応を改め、災害救助法とは異なる新たな立法措置を講じる責務があるというべきである。

5  よって、当会は、国に対し、原発事故の避難者の生活再建のため、避難者からの詳細な意見聴取を実施した上で、避難者に対する公営住宅及び民間借り上げ住宅等の提供について、住宅供与期間のより長期化、転居・住み替えを可能とする等の内容を含む、原発事故避難者の総合的な支援を実現するための新たな立法措置を行うよう求めるものである。

2015年(平成27年)3月26日

京  都  弁  護  士  会

会長  松  枝  尚  哉
  


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