「集団的自衛権の行使等を容認する閣議決定に基づく法整備に断固反対する会長声明」(2015年5月1日)


政府は、昨年7月1日、集団的自衛権の行使等を容認する閣議決定を行い、現在開催されている通常国会においてこの閣議決定を具体化する法律(以下「安全保障法制」という。)の制定・改正を予定している。この安全保障法制では、存立危機事態(我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある事態)に集団的自衛権の行使が認められるほか、「現に戦闘行為を行っている現場」以外で弾薬の提供まで含めた他国軍隊の支援活動が実施され、あるいは国連が統括しない国際的な平和協力活動において自衛隊員が任務遂行のために武器を使用することなどが認められることになる。このような安全保障法制の制定・改正は、憲法9条の解釈としてこれまで許されないとされてきた集団的自衛権の行使を容認し、自衛隊の活動が他国の武力行使と協働・一体化される道を開くものであり、国際紛争の解決の手段として武力行使を許さないとしている憲法9条に明らかに違反するものである。

当会は、「安全保障を巡る憲法問題と立憲主義の危機に関する会長声明」(昨年6月10日)において、集団的自衛権の行使を容認する解釈改憲は憲法9条2項を廃止するに等しく、立憲主義の見地から重大な問題があると指摘した。さらに、「立憲主義を否定・破壊する閣議決定に断固抗議する会長声明」(昨年7月24日)において、この閣議決定が解釈によって憲法9条2項改正と同等の結果を得ようとしている点で、憲法改正手続を定めた憲法96条1項を潜脱し、立憲主義を否定しているものだと指摘した。今般の安全保障法制は、上記閣議決定に続いて再び、憲法改正手続を経ることなく実質的に憲法9条を改変するものであって、当会の上記二つの会長声明において危惧していた立憲主義を否定・破壊する事態が現実化することになる。このような立憲主義を否定・破壊する動きは到底容認できない。

当会は、立憲主義の更なる破壊をもたらす安全保障法制の制定・改正に断固反対する。

      2015年(平成27年)5月1日

京  都  弁  護  士  会

会長  白  浜  徹  朗




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