知っていますか?適格消費者団体


  ある事業者のサービスを解約したら、多額のキャンセル料を請求された。セールスマンが突然自宅に押しかけてきて、なかなか帰ってくれず、しかたなく商品を買ってしまった。商品の品質について誤解させるような広告が配布されている。
このような消費者被害は、後を絶ちません。しかも、このような不当な活動を行う事業者は、同様の手法で何人もの消費者をターゲットにするので、その被害は多数に上ります。
  では、消費者側として、このような事業者に対抗し、不当な事業活動を止めさせることはできないのでしょうか。もちろん、被害に遭われた個々人が、事業者に対して、支払ったキャンセル料や代金の返還を求めて訴訟をしたりすることは1つの方法です。ですが、これによって解決できるのは、すでに被害に遭われた方の救済までで、今後の被害を予防することまではできません。また、個々の消費者の力だけでは、圧倒的な情報量やマンパワーを持つ事業者に対抗するのは難しい面があります。
  そのような消費者被害の実態を受けて、2007年6月から導入されている制度が、「消費者団体訴訟制度」です。この制度は、全国で活動する消費者団体の中から内閣総理大臣が認定した「適格消費者団体」が、消費者を代表して、消費者契約法や特定商品取引法、景品表示法に違反する事業者の不当行為に対して、その差止めを請求できるとする制度です。
この消費者団体訴訟制度では、適格消費者団体が、訴訟で、事業者の不当行為を止めるように求めることができ、訴訟に勝利すれば、事業者は不当な行為を行うことができなくなります。これにより、不当行為による被害を防止することができるのです。しかも、適格消費者団体が、個々の消費者を代表して、訴訟を提起することができるので、ある適格消費者団体の請求が認められれば、多くの消費者を同時に守ることができます。
そして、現在、全国には、12の適格消費者団体があり、それぞれ、各地域で、消費者を守るために精力的に活動しています。

  ここまでお読みいただいて、少しでも適格消費者団体に興味を持っていただいた方がいらっしゃれば、「その適格消費者団体って、京都にもあるの?」と気になられるかもしれません。
  もちろんあります。しかも強力な適格消費者団体が。
  名前を、「京都消費者契約ネットワーク(略して、KCCN)」といいます。このKCCN、扱う訴訟は全国トップクラスで(全国の適格消費者団体が提起した訴訟のうち、約3分の1は、KCCNが扱っている事件です。)、「多くの差止請求訴訟を提起してめざましい成果を上げてきた」として、消費者法学の分野で成果を上げた団体、個人に贈られる「津谷裕貴・消費者法学術実践賞」も受賞しています。
例えば、最近では、携帯電話利用契約のキャンセル料の問題や、冠婚葬祭互助契約の解約金の問題、クロレラ広告の問題などを扱っています。いずれも社会的影響力が大きく、消費者保護の観点から重要な問題を問いかける事件です。
  京都にこのような団体が存在することを知って、驚かれたでしょうか。
KCCNは、訴訟活動以外にも、ホームページ上で消費者問題に関する豆知識をアップしたり、勉強会やシンポジウムを行ったりと、消費者の皆様への情報発信も積極的に行っています。
興味を持っていただいた方は、是非、KCCNのホームページをチェックしてみて下さい。

  現在、このような適格消費者団体が、全国で活動を続けています。適格消費者団体が、不正な事業活動を防止することで、市場において、誠実に企業努力をしている事業者が正しく評価されることになり、公正な市場が実現されるのです。
  そして、消費者団体訴訟制度は、今、新しいステージを迎えようとしています。現在は、適格消費者団体が、事業者の不正な行為を止めさせるという「予防」のみが役割ですが、新しい制度として、不正行為の被害に遭った消費者を代表して、事業者から、被害金を取り戻すこともできるようになるのです。この制度は、適格消費者団体が、代表して被害金を取り戻した後で、個々の消費者に被害金を返還するというものです。この制度がスタートすれば、適格消費者団体は、「予防」だけでなく、「被害の回復」も担えるようになります。
  このように今、目覚ましい活動を進めている適格消費者団体に、是非ご注目下さい。
  そして、公正な社会の実現のための活動を、京都から盛り上げていきましょう!

伊吹  健人(2015年7月27日)


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