少年法の適用年齢引き下げに反対する会長声明(2015年6月24日)


  第189回通常国会において、選挙権年齢を18歳以上に引き下げる改正公職選挙法が可決成立した。同附則第11条が、選挙権年齢引き下げを踏まえ「少年法その他の法令の規定について検討を加え、必要な法制上の措置を講ずるものとする」としていることと関連し、現在、少年法の適用年齢を現行の20歳未満から引き下げることが議論されている。

  しかしながら、法律の適用年齢を考えるに当たっては、それぞれの法律の立法趣旨や目的ごとに個別具体的に検討すべきである。少年法の適用年齢は刑事政策的考慮に基づくものであって、選挙権の保障や、国政への民意の反映を目的とする公職選挙法改正とは立法趣旨、目的が異なるのであるから、選挙権年齢の引き下げと連動すべき関係にはない。

  少年法適用年齢は、現行少年法が1948年(昭和23年)に制定された際、18歳未満から20歳未満に引き上げられた。その趣旨は、20歳未満の若年犯罪者の増加と悪質化が顕著になっていた当時の状況を踏まえ、それらの者は、心身の発達が十分でなく環境その他の外部的条件の影響を受けやすいことから、その対応策としては刑罰を科すよりも保護処分に付する方が適切であるということにある。
かかる趣旨に基づき、少年法は、20歳未満の少年の刑事事件につき、全件家庭裁判所に送致するものとしている。家庭裁判所は、人間行動科学に基づくデータを踏まえて、少年の非行の原因と背景を解明し、その少年の立ち直りにとって最も適切な処遇方法を探り、生活環境の調整を行うこととされている。このため、少年法は少年の処遇について、刑罰ではなく保護処分を優先し、少年院送致や保護観察処分などにより、個別的な指導、教育処遇が確保されてきたのである。

  他方、今日の青少年は、身体的には早熟傾向にあったとしても、精神的・社会的自立が遅れる傾向が指摘されており、少年法の適用年齢を引き下げるべき立法事実は存在しない。また、「続発する少年犯罪に対処するために少年法適用年齢を引き下げるべき」という声もあるようであるが、少年犯罪が増加しているとか、凶悪化しているとの統計データは存在しない。

  2013年(平成25年)の統計によれば、検察庁が新しく通常受理した少年被疑者数のうち、18歳、19歳の少年は約44.9%を占めており、少年法適用年齢を18歳未満に引き下げると、これらの少年が家庭裁判所の手続に一切乗らなくなる。2013年(平成25年)の検察の起訴猶予率は65.2%であることからすれば、多数の少年に対し立ち直りのための手当が不十分なまま起訴猶予等の処分がされることとなり、再犯防止の観点からも問題を残しかねない。
  よって、当会は、少年法の適用年齢を現行から引き下げることに強く反対する。

      2015年(平成27年)6月24日

京  都  弁  護  士  会

会長  白  浜  徹  朗  



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