「区域外避難者への避難先住宅無償提供の終了に反対する会長声明」(2015年7月23日)


当会は、2015年(平成27年)3月26日付「原発事故避難者への住宅等の供与に関する新たな立法措置等を求める会長声明」において、福島第一原子力発電所事故(以下「原発事故」という。)後4年を経過してなお多数の避難者がおり、その多くが災害救助法第4条第1項第1号により無償で供与された避難住宅(以下「避難住宅」という。)に居住しているところ、その入居期間延長が1年ごととされていることが生活再建の妨げとなっていることから、国に対して避難住宅入居期間を長期化する等を実現する新たな立法措置を求める意見を表明した。
  ところが、福島県は、2015年(平成27年)6月15日、東日本大震災と東京電力福島第一原子力発電所事故に伴う避難者が入居する応急仮設住宅と民間借り上げ住宅の無償提供を、避難指示区域以外からの避難者(区域外避難者)については、2017年(平成29年)3月末で終了すると発表した。しかも、打ち切りを決定したのみで、その後の支援策は今後の検討とされているに止まる。

しかしながら、福島県が避難指示区域外からの避難住宅供与を2017年(平成29年)3月末で打ち切る上記方針を、当会は、到底容認できない。

福島県の2015年(平成27年)4月27日付避難者意向調査結果によれば、(1) 避難指示区域外からの避難者の58.8%が避難住宅に居住しており、避難住宅は避難指示区域外からの避難者の住居として今もなくてはならない措置である、(2) 避難指示区域外からの避難者の46.5%が避難住宅の入居期間の延長を要望しており、居住に関する第1の要望となっている、(3) そして、避難指示区域外からの避難者が入居期間延長を要望する理由の第1位は「生活資金に不安があるため」で58.3%、第2位が「放射線の影響が不安であるため」で56.6%となっている。避難指示区域外からの避難者に対する賠償が不十分な水準にとどまっている中、延長を求める理由はいずれも切実である。

京都府下の避難住宅に居住する避難者について見れば、2011年(平成23年)12月頃が最も多く303世帯、827名(2011年(平成23年)12月28日現在)であったが、現在でも174世帯、434人(2015年(平成27年)7月1日現在)の避難者が京都府下の避難住宅で生活を続けている。未だにピーク時の過半の避難者が避難を継続している事実自体が、避難住宅の延長の必要性を示している。
福島県内の除染作業や、放射性物質の健康影響に対する科学的な解明は、いまだ十分とはいえない。避難住宅の無償提供を今打ち切れば、これら多数の避難者に、生活資金の不安の問題に直面しながら避難を継続するか、放射線の影響の不安を押して帰還するかの選択を強いることとなる。

これは、被災者が避難、移住及び帰還のいずれを選択した場合であっても適切に支援することを基本理念の一つに掲げた「東京電力原子力事故により被災した子どもをはじめとする住民等の生活を守り支えるための被災者の生活支援等に関する施策の推進に関する法律」の立法趣旨にも反するものである。

そこで、当会は、福島県に対し、区域外避難者への避難住宅の供与を2017年(平成29年)3月末で打ち切る方針を撤回し、長期延長することを求めると共に、改めて国に対して避難住宅入居期間のより長期化等の内容を含む原発事故避難者の総合的な支援を実現する制度の立法措置を講ずるよう求める。

2015年(平成27年)7月23日

京  都  弁  護  士  会

会長  白  浜  徹  朗

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