「労働者派遣法の改正に抗議する会長声明」(2015年9月17日)


  本年9月11日、労働者派遣法改正法案が国会で可決成立した。成立した改正法は、通常の正規雇用に代えて派遣労働を活用する常用代替防止という労働者派遣法の根本原則を大きく転換し、派遣元で無期雇用されている派遣労働者については常用代替防止の対象から外し、派遣元で有期雇用されている派遣労働者については業務単位ではなく人単位で派遣期間を制限することとして、派遣労働者個人単位で上限期間(3年)を設定している。
  改正法には実効性ある均等待遇の確保措置が盛り込まれていないことから、無期雇用派遣労働者について派遣可能期間を撤廃することにより、企業が直接雇用労働者をいつでも契約関係を断絶できる派遣労働者に置き換えることを許容することにつながり、結果として常用代替を促進する危険性はきわめて高い。また、有期雇用の派遣労働者についても、派遣先・派遣元事業者が3年経過するごとに派遣労働者を入れ替えて派遣労働を継続して使うことが可能となり、やはり常用代替防止の理念が実質的に骨抜きとなってしまい、派遣労働の固定化をもたらすことになる。このように、改正法の成立により、本来原則とすべき直接雇用が減少することは明らかである。また、改正法においては、派遣期間の満了した派遣労働者の雇用安定措置として、派遣先への直接雇用申入れ、派遣元での無期雇用化が挙げられているが、実効性を欠いており、多くの派遣労働者が失職することを防止できないなど、労働者派遣法の基本理念とされる派遣労働者の雇用保障がきわめて不十分なものとなっている。改正法によれば、企業は一般的・恒常的業務について派遣労働者を永続的に利用できることになり、労働者全体の雇用の安定が大きく損なわれるものである。常用代替防止の理念を蔑ろにする改正法は極めて問題である。
  労働者派遣法は、2012年(平成24年)に改正され、違法な派遣について「直接雇用申し込みみなし」制度が設立され、3年間の猶予の後、本年10月1日に施行される。ところが、改正法は、成立からわずか20日間足らずの本年9月30日を施行日としている。派遣期間制限に違反して働かされ続けてきた派遣労働者が3年間待ち続けてきた直接雇用への期待を裏切るものである。
  当会は、2014年(平成26年)3月6日付「『労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護に関する法律等の一部を改正する法律案要綱』に反対する会長声明」において、改正法のもととなった法律案要綱について、常用代替の防止の理念を放棄するものとして、これに反対するとともに、派遣労働者の雇用安定を確保し、常用代替防止を維持するための労働者派遣法改正を行うよう求めた。
今回の改正法はこうした当会の提言に真っ向から反するものである。当会は、改正法の成立に強く抗議するとともに、国に対し、派遣労働者の雇用安定を確保し、常用代替防止を維持するとともに、均等待遇規定の導入などを規定する労働者派遣法の抜本改正を早期に実現することを求める。

      2015年(平成27年)9月17日

京  都  弁  護  士  会

会長  白  浜  徹  朗

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