事例1 売掛金を自分の力で回収したい

相談キーワード

 債権回収、売掛金、代金、支払い、消滅時効、支払督促、少額訴訟

【相談者】30代、広告業、自営
【相談内容】
取引先が、代金を払ってくれません。
今から1年10か月前、ある業者から広告パンフレットを作成してほしいとの注文を受け、その業者の広告パンフレットを作成して引き渡したのです。その代金30万円を支払ってもらえません。
私から相手の業者に対しては、何度も電話で支払いをするよう申し入れをしましたが、支払いをしてくれません。
このようなやり取りを何度も繰り返していく中で1年10か月が経過してしまったわけです。
この30万円を回収したいのですが、弁護士に依頼するとお金がかかってしまうので、できる限り自分で進めたいと思っています。
代金を回収するための方法として、自分でできる法律上の制度にはどのようなものがありますか?

【弁護士の回答】
債権回収は「スピード勝負」といったところがありますが、今回のケースでは特に消滅時効の問題がありますので、まずは急がれた方がよいと思います。
広告パンフレットの作成の代金は、民法173条2号の「自己の技能を用い、注文を受けて、物を製作することを業とする者の仕事に関する債権」に該当すると考えられます。この場合、 債権は2年で短期消滅時効にかかってしまいます。すでに1年10月が経過していますので、まずは時効完成を阻止するための方策をとらないといけません。
まず、内容証明郵便で通知を送り、支払いを催告しましょう。催告をすることにより、時効完成時時効の完成は、催告から6か月後に延長されます。そして、その6か月の間に裁判上の請求を行うことで、 時効は中断します。
今回はできる限りご自身で進めたいとのことですので、裁判上の請求の方法としては、支払督促の申立て少額訴訟の提起が選択肢に上がってきます。 これらの手続の具体的内容についても、ご相談時にアドバイスいたします。
支払督促を得た後や少額訴訟で判決を得た後も支払いがない場合は、強制執行の申立てをする必要があります。強制執行については事例2もご参照ください。

事例2 弁護士に依頼してなんとか売掛金を回収したい

相談キーワード

 債権回収、売掛金、代金、支払い、訴訟、仮差押、差押え、倒産

【相談者】40代、工務店、自営
【相談内容】
建築工事の下請をしたのですが、取引先の建築業者が工事代金を払ってくれません。
工事代金の合計は1000万円です。このうち、着手時に300万円、中間金として300万円、工事の完成及び引渡しの後15日以内に工事代金400万円を支払ってくれるという条件でした。
着手時300万円と中間金300万円は支払ってくれましたが、約束の工事を完成させて引き渡しまたのに、残代金400万円については、約束の支払日が過ぎているのに払ってくれないのです。
なお、相手方から工事に対するクレームなどはありません。
金額が400万円という大きな額ですので、弁護士に依頼することも考えています。どうしたらよいでしょうか?

【弁護士の回答】
クレームが特にないのに支払いをして来ないのなら、その得意先は資金繰りに窮している可能性があります。倒産状態になる前に、早期に売掛金を回収することが大事です。
まず、弁護士から内容証明郵便で請求書を送ることが考えられます。債権を回収したいという本気度を示し、支払いを促すのです。
それでも支払ってこない場合は、訴訟提起することが手順としては順当です。裁判手続は複雑なので、専門家である弁護士に委任するのが得策でしょう。
訴訟で勝訴し、判決が確定しても、支払いをしてくれないようであれば、今度は財産を差押えし、強制的に回収する必要があります。
また、訴訟をしているうちに、得意先が財産を使い切ったり、隠したりするおそれもあります。可能であれば、それを避けるために、訴訟提起の前に、得意先の財産を保全するための 手続である財産の仮差押をしておくことをお勧めします。
ただし、仮差押も、差押えも、あらかじめ得意先にどのような財産(売掛金、所有不動産、銀行預金など)があるかどうかが分かっていないとできません。弁護士もある程度の財産調査は可能ですが、 注文主に対する元請会社の請負工事代金請求の有無やその代金が元請会社のどの金融機関に入金されたか等、ご自身でもできる限りの情報収集をしていただければと思います。

事例3 地代を払わない借地人との賃貸借契約を解除したい

相談キーワード

 賃貸借、賃料不払い、信頼関係破壊、解除

【相談者】50代、不動産業、社長
【相談内容】
当社では、当社所有の土地を賃貸しているのですが、この度、借地人が地代を支払わなくなってしまいました。
未払い分は、半年分にもなってしまっています。
借地人に何度か支払いを求めたのですが、謝罪をするどころか、全く払うそぶりを見せません。
賃貸借契約書上は、地代の滞納が2か月分以上に上れば解除できると定められています。
この場合、当社は、契約を解除することができるのでしょうか。

【弁護士の回答】
賃貸借契約を解除するためには、単に契約条項に違反するだけではなく、それによって借地人との信頼関係が破壊されたと評価される必要があります。契約書に記載されている 2か月分の滞納では信頼関係の破壊が直ちに認められるわけではないのです。未払い分が半年となると、解除しうるケースに該当するとは思いますが、解除の通知をした時、賃借人がすぐに未払分全額を 支払って来た場合、訴訟で必ず勝訴できるとは限りません。
つまり、実際に賃料不払いだけを理由に解除できるかは、契約の内容や不払いの回数、それまでの借地人との関係等、これまでの経緯にもよるのです。ただ、それらの経過を明らかにするために 書面での未払分の請求や解除の通知をするべきです。
また、強制的に契約を解除して建物の収去と明渡しを求めるのであれば、訴訟の手続きをする必要があります。
事情を詳しくお聞きしますので、弁護士の法律相談にお越しください。

事例4 用法を守らず、無断転貸していた借主との契約を解除したい

相談キーワード

 賃貸借契約、マンション、無断転貸、用法遵守義務違反

【相談者】40代、不動産業、自営
【相談内容】
私は、父から居住用マンション1棟を相続し、それを賃貸しています。
マンションは概ね満室だったのですが、この度、空き室が1室生じ、新たな入居者を迎えました。
入居者は、優しい感じのご夫婦でした。この2人であれば心配ないだろうと安心していたのですが、しばらくして、この夫婦にお貸しした部屋に見知らぬスーツ姿の男性が大きな荷物を持って入っていくのを 目にしました。「おかしいな」と思い、ご夫婦に確認したところ、このご夫婦は、とある会社にこの部屋を転貸し、その会社は、その部屋でエステを経営しているというのです。そして、私が見た男性は、 業務用品の納入業者だったというわけです。
マンションは居住用ですので、事業で使用されては困ります。この場合、出て行ってもらうことはできないのでしょうか。

【弁護士の回答】
出ていってもらうには、賃貸借契約を解除しなければなりません。
契約を解除できるかどうかは、まず、賃貸借契約書の記載をご確認いただく必要があります。
賃貸借契約書に賃貸借の目的が「居住用」と記載されているのであれば、法人に転貸してエステ事業として事業として使用させていたことは、用法遵守義務違反にあたり、解除事由となり得ます。
また、賃貸借契約書に、借主による転貸を許す旨の記載はありますか。その記載がなければ、借主は貸主の承諾なく転貸をすることができませんので、無断転貸となり、解除事由となり得ます。
賃貸借契約書を持参して、弁護士の法律相談にお越しいただければ、解除が可能かどうかをアドバイスいたします。

事例5 大家から建物の賃料の増額を求められている

相談キーワード

 賃貸借契約、賃料増減額、継続賃料、鑑定

【相談者】60才、飲食店、社長
【相談内容】
当社は、うどん屋を営んでおり、その事業用の店舗を賃借してきました。
当社は、祖父の代からこの店舗で商売をさせていただいており、大家との関係は良好だと思っていました。毎月の9万円の賃料の支払いも欠かしたことはありません。
ところが先日突然、大家から「来月から賃料を月額30万円に引き上げる。」と言われました。話を聞いてみると、大家だと思っていた前所有者は既に死亡しており、今は、東京に住んでいる前所有者の息子が この店舗用不動産の所有権を相続しているそうなのです。当社は当然、これに抗議したのですが、大家は全く取り合ってくれません。
この場合、当社は、大家が言っている月額30万円の賃料を支払わなければいけないのでしょうか。

【弁護士の回答】
借地借家法32条は、賃料の増減額請求を定めていますが、賃料の増額が認められるためには、「土地若しくは建物に対する租税その他の負担の増減により、土地若しくは建物の価格の上昇若しくは低下 その他の経済事情の変動により、又は近傍同種の建物の借賃に比較して不相当となった」との事情が必要です。現在の賃料が実際の土地の価値等から算出される賃料より低廉であるのであれば、 その乖離を解消させる方向で賃料の増額が認められる可能性があります。しかし、大家において、賃料が低廉である事実を証明する必要があるので、大家からの増額の要求を直ちに 丸呑みする必要はありません。当面は、今までどおり9万円の賃料を支払い続け、交渉を続けることになるでしょう。また、大家が従前の賃料額の受領を拒絶してくる場合には、その賃料を法務局に 供託する必要があります。
大家は、弁護士に依頼して、訴訟や調停で賃料の増額を求める手続をしてくる可能性もありますので、借主として適切な対応をするため、弁護士への早めの法律相談をお勧めします。
また、交渉にあたっては、大家の真の目的が賃料増額そのものか、この不動産からの立退きを求めているか等を検討することが必要です。それにより、解決の道筋も変わることになります。

事例6 開業が遅れて生じた営業損害を賠償してほしい

相談キーワード

 賃貸借、損害賠償

【相談者】50才、小売業、社長
【相談内容】
当社は、スーパーマーケット事業を営んできましたが、この度、事業拡大のため、新店舗用の建物を賃借することにしました。当初の条件に合った建物が見つかったので、賃貸借契約を締結しました。 賃貸借契約締結後は、新店舗の開業に向けて準備をしていました。
建物の引渡しを受けたのですが、開店直前になって、賃借した建物で営業ができなくなる程度の雨漏れが発生しました。雨漏り対策の工事が開店日には間に合いそうもなく、予定どおりに営業を開始できません。
当社としましては、周辺地域の新聞広告をするなどして開店セールの宣伝をしているため、別の物件を探して移るということは予定していません。
この場合、当社は、予定していた営業を開始できなかったため生じた損害を賠償してもらえるのでしょうか。

【弁護士の回答】
開店が遅れたことによって営業ができなかった間に本来得るはずであった利益を失ったことについて、営業損害として賠償請求できる可能性があります。しかし、そのような営業損害を請求する前提として、 貴社は、スーパーマーケットの新店舗の一定時期での開業予定を前提として賃借すること等を賃貸人が予見していたことを証明する必要があると思われます。
また、その場合、「本来得るはずであった利益」をどのように算定が問題となります。算定の方法については様々な見解がありますので、法的に妥当と思われる方法について、法律相談にお越しいただければと 思います。

事例7 有期の契約社員を雇止めしたい

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 有期労働契約、更新、雇い止め

【相談者】30代、運送業、社長
【相談内容】
当社は、運送業をしています。
トラックの運転手を1年契約で雇用しました。その後、一度契約を更新しましたが、2年目終了時に契約を更新しない旨伝えて、辞めてもらいました。
そうしたところ、後になってその元従業員の代理人弁護士から通知書が届き、不当な雇止めであるから雇止めは無効であるとして、職場復帰地位の確認と未払給与の支払いを求められています。
この元従業員を雇い続けないといけないのでしょうか。また、最初の契約の時に、「3年後に正社員にするから。」と言ってしまったのですが、問題になるでしょうか。

【弁護士の回答】
我が国の労働法では、労働者保護の観点から解雇は簡単には認められません。
また、有期労働契約における雇止めの場合にも、労働者への対応には十分な注意が必要です。労働契約法19条によれば、①過去に反復して更新されたことがある有期労働契約で、その雇止めが無期労働者を 解雇することと社会通念上同視できると認められるものと、②労働者において有期労働契約の期間満了時に当該有期労働契約が更新されるものと期待することについて合理的な理由があるもの であると認められるものについては、客観的・合理的な理由があり、かつ、更新の拒絶が社会通念上も相当であることが必要でなければ、雇止めを有効にできないとされます。
今回のケースは、契約更新は1回ですので①には該当しませんが、「3年後に正社員にするから。」と言ったことが更新への期待を抱かせたとして、②の場合に該当すると主張される可能性があります。
裁判での対応を念頭に置きながら、弁護士に相談されることをお勧めします。

事例8 未払時間外手当への対策を講じたい

相談キーワード

 労働契約、未払時間外手当、残業代、就業規則、タイムカード、変形労働時間制、フレックスタイム制

【相談者】30代、IT、社長
【相談内容】
当社は、スマートフォン用のゲームアプリの開発をしています。
従業員は5名で、全員がプログラマー等技術者です。会社設立後11年が経ちましたが、これまで従業員とは口頭で労働契約を個別にしてきました。当社は、一応、午前9時に勤務を開始して、 午後6時には勤務を終了すると決めています。
しかし、実際には、出勤時間は従業員によってばらばらですし、夜遅くまで残って仕事をしている従業員もいます。
最近残業代等未払賃金を請求されるケースが増えていると聞きます。
今後きちんとしてきたいと考えているので、どのようにすればいいのか教えてください。

【弁護士の回答】
まずは、就業規則を作成し、個々の労働者と書面で労働契約を締結しておくことです。
また、従業員の就業時間を適切に管理しておかないと、不当に残業代を請求されることもありますので、タイムカードなどで日頃から従業員の就業時間について管理しておくことが大切です。
さらに、労働者を一定時間の労働に拘束するよりも、その裁量に任せて業務遂行に当たらせる方が好ましい事業の場合には、変形労働時間制、フレックスタイム制等を採用することも検討することになります。
なお、お聞きした状況ですと、現状でも未払時間外手当が発生していることが推測されます。時間管理をしていないため、時間外手当を算定すること自体が困難な状況と思われますが、未払時間外手当を 請求される可能性が既にあります。その対策についてもご相談いただくと良いでしょう。

事例9 インターネットで拾った契約書のひな形を使ってよいか

相談キーワード

 契約書作成、ひな形

【相談者】30代、サービス業、社長
【相談内容】
私は、新たにサービス業を起業するにあたり、事業に使うための貸室を借りることにしました。
この貸室の所有者にその旨を伝えたところ、賃貸借契約書を手渡され、これで契約をしたいと言われました。
もっとも、この契約書はどうやらインターネット上で公開されている賃貸借契約書の雛形をほとんどそのまま用いているようです。
そこで、このような賃貸借契約書で契約をすることに問題はないのか教えていただきたいです。

【弁護士の回答】
インターネット上に公開されているひな型は、不正確、不適切な内容、本件の実態にそぐわない内容、賃借人にとって不利な内容が書かれていることが多いのですが、法律上、賃借人保護の観点から、 明渡し等に関する法律の定め(強行法規)より賃借人に不利な条項は無効とされています。ただし、当事者間の合意に基づいて法律の定めよりも賃借人に不利にすることが可能となる事柄もありますので、 ぜひとも弁護士にチェックしてもらうべきです。

事例10 相手方から提示された契約書案にそのまま調印してよいか

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 取引基本契約書、契約書チェック

【相談者】40代、小売業、社長
【相談内容】
私は、食料品の小売業を営んでいます。
これまで常連の仕入先とは、取引基本契約書を締結することなく、個別の発注書によって取引を行ってきました。
しかし、先日、仕入先が取引基本契約書を持参してこられ、今後の取引はこれに基づいて行うと言われました。
このままの内容で取引基本契約書を締結してしまってよいものでしょうか。

【弁護士の回答】
取引基本契約書には、取引に必要な納期や、物に瑕疵があった場合の取扱い、違約金の定めなど、様々な事柄が記載してありますが、その取引基本契約書がこれまでの取引と同じ内容となっているのか 確認する必要があります。なぜなら、一般的に、契約書を作成するときは、自社に有利な条項を盛り込みがちだからです。
一度締結してしまうと、契約期間中はその条項に縛られることになりますので、後の祭りとならないよう、必ず弁護士にチェックしてもらってから、契約書に調印してください。

事例11 複合機のリース契約を解約したい

相談キーワード

 リース契約、解約、違約金、訪問販売、特定商取引法、クーリングオフ、電A機、複合機、FAX、コピー機、エアコン、リース会社、信販会社、販売店

【相談者】60代、居酒屋店、自営
【相談内容】
先日、店(自宅を兼ねてます)に営業マンがやってきて、電話機と複合機のリース契約の勧誘を受けました。「電話料金も安くなる。」、「リース料は毎月の負担は少ない。」等と長時間説明され、 根負けするような形で申込みました。
後日、電話機と複合機が納入されたのですが、正直言って立派すぎます。子機への転送もできるのですが、うちの店舗は狭く親機だけで十分ですし、複合機についてもコピーは使いません。 FAXも元々あった家庭用の電話機についているもので十分です。
しかも、電話料金は下がった実感はありません。むしろリース料が毎月2万円近くかかっています。リースの期間は7年間もあり、ずっと払っていかなければなりません。
これでは損ばかりなので、以前の電話機に戻そうとリース会社にリース契約の解約をお願いしたら、リース会社には「解約には応じられない。」と断られてしまいました。リース契約を解消し、 負担をなくすことはできないでしょうか。

【弁護士の回答】
消費者に対する訪問販売は特定商取引法で規制されており、クーリングオフによる契約解消が可能です。しかし、特定商取引法は事業者には適用されないのが原則です。そこに目をつけた販売業者が、 消費者に近い立場の個人事業主や小規模事業者に対して悪質なリースの訪問販売を行っている事例が散見されます。
このように事業者である以上、リース契約の解消は容易でないこともありますが、Aさんのような個人の小規模零細の個人事業者の場合、例外的に特定商取引法が適用され、 クーリングオフでの契約解消が可能な場合があります。
また、営業マンの説明内容が誤りであったり、詐欺的なものである場合には、リース契約が錯誤無効とされたり、詐欺取消されたりする場合がありますし、 営業マンが所属する販売店に対して損害賠償請求することができる場合があります。
ベストの対策を検討するためにも、一度弁護士にご相談ください。
なお、事業者のリース被害については、ひまわりほっとダイヤルのほか、リース被害京都弁護団(事務局:中隆志法律事務所 電話 075-253-6960)でも対応しています。
法律相談の際には、営業マンから手渡された書類やリース会社から送付された書類をご持参ください。

事例12 ホームページのリース契約を解約したい

相談キーワード

 リース契約、訪問販売、特定商取引法、クーリングオフ、ホームページ、SEO対策、プログラム使用許諾、リース会社、信販会社、販売店、解約、違約金

【相談者】40代、英会話教室、自営
【相談内容】
先日、ホームページ製作会社の営業マンが自宅にやってきて、「売上げを伸ばすためにホームページを作りましょう。」「ネット集客にすれば絶対生徒が増えます。」とホームページの作成を勧められました。 私は自宅で英会話教室を起業したてでまだまだ生徒の入りが悪かったため、生徒数を増やすために申し込むことにしました。
しかし、出来上がったホームページの出来は、私がイメージしていたものとかけ離れており、英単語の表記に誤りがあったりして使い物になりそうにありません。また、肝心の生徒数も増えませんでした。
そこで、こんな業者との関係は一刻も早く解消し、ホームページも作り替えてもらおうとしたのですが、リースを解消しようにも「解消できない。」「解約すると将来のリース料金分の違約金がかかる。」など と言われてしまいました。
今では、できの悪いサイトと、プログラムが入ったCDが手元にあるだけで、毎月1万5000円くらいのリース料を払っています。
このまま泣き寝入りをしなければならないのでしょうか。

【弁護士の回答】
インターネットの普及により、近年増えてきている傾向にある相談事例です。
まず、〈事例12〉でご説明したことが、ここでもそのまま当てはまります。
また、ホームページのリース契約は、ホームページを作成するためのプログラムの使用許諾という法形式で組まれます。このように、ホームページのリース契約はあくまでプログラムの使用許諾がその契約の 内容となっているのですが、時には、リース契約の内容が、実質的にホームページ作成作業という「役務提供」を対象としていると評価できる場合があります。そのような場合には、 リース契約の対象に食い違いがあることを理由に、リース契約の錯誤無効を主張することができる余地があります。
なお、事業者のリース被害については、ひまわりほっとダイヤルのほか、リース被害京都弁護団(事務局:中隆志法律事務所 電話 075-253-6960)でも対応しています。
法律相談の際には、営業マンから手渡された書類やリース会社から送付された書類をご持参ください。

事例13 会社を長男に継がせたいが、自分の死後子供たちがもめないようにしてほしい

相談キーワード

 リース契約、訪問販売、特定商取引法、クーリングオフ、ホームページ、SEO対策、プログラム使用許諾、リース会社、信販会社、販売店、解約、違約金

【相談者】70代、卸業、社長
【相談内容】
私は、鮮魚卸をしている会社の代表取締役です。
今まで会社は、妻と長男に手伝ってもらってきましたが、私は、昨年私が病気を患って以降、経営にはあまり関与しておらず、現在、長男が実質的な経営をしています。
そのため、このまま長男に会社を継いでもらいたいのですが、私には、長男以外に2人の子どもがいます。恥ずかしながら、3人の子らはあまり仲が良くないので、相続の際にはもめると思うのです。
会社を長男に譲る場合に何に気をつければよいでしょうか。

【弁護士の回答】
会社を長男に継がせるならば、まずは、あなたが所有している株式等の事業用資産を長男に集中して取得させることを考えてください。それを生前にできない場合は、遺産分割の場面で遺産を巡って 兄弟間でもめることが予想されますから、株主等の事業用資産を長男に相続させる旨の遺言を作成しておくことをお勧めします。
また、遺留分の対策も必要です。長男以外の子らにも、相続財産に対して概ね法定相続分の2分の1の相続分(生前贈与分を含んで計算することに注意してください)が保証される権利 (遺留分といいます)がありますから、それに配慮し、長男以外の子らに一定程度の財産を取得させる内容の遺言にすることも検討しなければなりません。
なお、遺言の作成後に会社の業績が伸び、あなたが亡くなって遺言を執行する時には株式の評価が大きく変わることがあります。その場合、遺言作成時に想定していたよりも遺留分の金額が大きくなってしまい、 折角遺留分に配慮して作成した遺言も無意味になることがあります。こうした問題点については、経営承継円滑化法に基づく除外合意(※推定相続人全員の合意により、 後継者が旧代表者からの贈与等により取得した株式等について、旧代表者の相続において、遺留分算定基礎財産に算入しないこととする合意)の利用を検討すると良いでしょう。
また、以上で述べた遺産の評価の方法ですが、裁判では、当事者間で合意されない限り、時価評価となります。時価評価は相続税評価額よりも大幅に高額になる場合がありますのでその点にも注意が必要です。
いずれにせよ、継続的に事業承継対策のフォローをしてくれる弁護士が必要です。あなたの思いを汲み、会社の経営の安定のために働いてくれる弁護士を探されることをお勧めします。 

事例14 親族外に会社の経営権を譲りたいが、自分の個人保証を外してほしい

相談キーワード

 事業承継、相続、個人保証、経営者保証に関するガイドライン

【相談者】70代、建設業、社長
【相談内容】
私は、小さいながらも昭和60年に電気工事会社を設立して以降、その会社の代表取締役として会社を経営してきました。
しかし、私も70歳です。会社を退き、今後は、私の親族ではないものの、信頼できる人物に代表取締役となって会社を経営してもらおうと思っています。
ただ、私は、金融機関に対する会社の債務を個人で保証しており、引退する際には、この個人保証からも免れたいと考えています。何か良い方法はありますでしょうか。

【弁護士の回答】
代表取締役を退いたからといって、当然に保証契約が終了することはありません。また、保証債務は相続の対象となりますから、そういう意味でも、できるかぎり生前に保証を外す方策を 講じておくことが望ましいです。
例えば、次の代表取締役となる人に個人保証をしてもらうことで、金融機関があなたを保証人から外してくれることもあるでしょう。
しかし、次の代表取締役となる人の状況によってはそういった対応が難しいこともあります。そのような場合は、今後の会社の債務の保証は別途手立てを講じつつも、あなたの保証債務を徐々に減らしていく等の 計画を策定し、金融機関との継続的な交渉をしながら、最終的に保証債務を免れるということを考える必要があります。なお、平成16年の民法改正により導入された元本確定期日制度がありますので、 一定期間経過後は、あなたが保証する会社の債務の元本は確定します。
また、近年、金融機関に適用される準則である「経営者保証に関するガイドライン」ができましたが、同ガイドラインは、金融機関が個人保証を外す際に検討する事項が記載されています。 会社の業績が比較的良い場合には、これを参照しながら個人保証を外すよう金融機関と交渉することも考えられます。
したがって、このような継続的な対応が必要になりますので、弁護士を顧問にして、すぐに法的アドバイスを得られるような体制を構築しておくと良いでしょう。

事例15 自己破産せざるを得ないが、今後のことが不安だ

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 破産、免責、自由財産、未払賃金立替払制度

【相談者】60代、建設業、社長
【相談内容】
私は、昭和50年創業、電気工事を請負う株式会社の代表取締役をしています。資本金は1000万円で、従業員は5人です。
近年は、3期連続で赤字を出す状態です。金融機関への返済は、利息だけにしてもらっています先々月から従業員の給与を遅配し始めてしまいました。債権者は、借入金約8000万円の金融機関2社、 従業員の未払賃金約300万円、小口の仕入先数社、負債総額は約8500万円です。金融負債については、私人も連帯保証しています。これまでは、私の個人資産を投じながら何とか資金繰りしてきましたが、 いよいよ私の個人資産も担保付きの自宅不動産のみとなり、当社のめぼしい財産も、担保付きの店舗不動産のみとなってしまいました。これらを売却しても、売却代金はあわせて約3000万円程度にしかなりません。 来月入ってくる見込みの売掛金等をあわせても、来月末の資金繰りの目途が立ちません。
そこで、私と会社の自己破産を考えていますが、代表者個人は自己破産をした後の生活はどうなるのでしょうか。年金も取り上げられてしまうのでしょうか。自己破産するとしても、せめて、 従業員の未払い賃金だけでも払ってあげることはできないでしょうか。

【弁護士の回答】
そもそも年金は差押禁止財産ですが、破産手続開始決定(昔でいう破産宣告)後に新たに取得した財産は、取り上げられませんので、あなた個人は、破産後は年金生活を送れます。 また、破産前の財産についても、一定の要件の下、最大99万円まで財産保有が認められ得ます。これを自由財産といいます。そして、免責許可が下りれば、破産手続開始決定時点までの 負債は免責されますので、支払う必要はなくなります。ただし、個人の破産の場合、租税等一部の債務は法律上免責されませんので、注意が必要です。自己破産をするための具体的な手続は、 弁護士に相談してください。破産申立をするために必要な書類や裁判所に納付する予納金等必要となる資金等についても説明してくれます。
従業員の未払い賃金については、未払賃金立替払制度というものがあります。これは、企業の倒産によって賃金や退職金が未払いのまま従業員が退職した場合、一定の要件を充たせば、 国(正確には独立行政法人労働者健康安全機構)が事業主に代わって未払賃金の一定額を立替払いするという制度です。この制度を利用すれば、従業員が一定の範囲で未払賃金の支払いを受けることができます。 ただし、未払賃金立替払制度を利用するためには、賃金が発生してからの期間制限があるので、破産手続をむやみに遅らせるようなことをせず、早めに弁護士に相談して下さい。